デジタル化進んで2歩後退? マイナンバーカードで転出手続きが簡素化されるというものの…

 引っ越しは何かとわずらわしい手続きが必要だが、住所の転出・転入が少しは簡単になるようだ。

 10月3日、政府はマイナンバーカードを使った住所の転出・転入の簡素化を閣議決定した。菅義偉前総理の時代に政府肝いりで創設したデジタル庁がもたらした成果だが、報道をよく読むと、必ずしもデジタルのような速さで変化がもたらされたわけではないことが分かる。

「その中身ですが、これまでは転出手続きをオンラインでできるのは限られた市町村のみでしたが、これがどこの市町村でも可能になります。ところが転入届はやはり転居先の役所に出向く必要があるのは変わりません。またその導入の時期ですが、これを政令として決定してからそれに応じた住民基本台帳法を改正する必要があるので、実際の施行は来年の2月6日からになります。中身も導入時期にも時間がかかって、なんとも微妙なのです」(全国紙記者)

 寺田稔総務大臣は「マイナンバーカードの利便性をより一層国民の皆様にも感じていただき‥‥」と簡素化の意義を協調するが、問題の転入については転入予約が同時に行えるのがメリットだとしたものだから、ネットやSNSでは「オンライン予約できるとかさすがデジタル庁さんやで」といった皮肉や、「何、この助けを呼ぶ人を呼ぶシステム」とひたすら呆れる声が上がっている。

 だがこれにはちょっと誤解があって、「予約」とはマイナポータルで転出の届けをすれば、転出証明書の情報がオンラインで転入先の自治体に送られるということで、さすがに転入先の役所に出向く日時を予約するというものではない。ただそれも役所的に事前準備が行えるので、ユーザーは待ち時間が少し短縮されるのみで、結局は役所に出向くことには変わりがなく、2度が1度になったという点では、半歩進んだというところか。

「でも総務省は昨年6月には、転出届に続いて転入届でもオンライン化を検討して、転出・転入の両方をオンラインで済ませられるよう協議を開始して、昨年内に結論を出して関連法令の改正を検討するとしていたので、当初の目論見からすればオンライン化が進んでいるとはとても言えません」(同)

 だから今回の決定は、トータルで見れば3歩進んで2歩下がったというところで、結局は「さすがデジタル庁さんやで」とは言い切れないのだった。
 
(猫間滋)

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