ライバルの「はま寿司」の仕入れ価格などの情報を不正に持ち出したとして、不正競争防止法違反で「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトの田邊公己社長(辞任)が警視庁に逮捕された件。
回転ずし業界はコロナ禍でも追い風だったことからむしろお互いに競争を煽るような状況にあったが、ここへ来て思わぬ形でその激しさを垣間見せる結果となった。
さて「はま寿司」と「かっぱ寿司」の両者だが、単なるライバルというだけではなく、過去には手を組んだこともあるという意外な関係にあった。
まず逮捕された田邊前社長が、はま寿司を傘下に置くゼンショー(現、ゼンショーホールディングス)でキャリアをスタートさせたことは逮捕時に広く報道されたところだ。むしろライバル社にあったからこそ、データを不正に持ち出す必要があったわけだ。
加えてカッパ・クリエイトとゼンショーは07年3月には資本業務提携まで行っていた。
「この時カッパはゼンショーに第三者割当増資を行い、カッパ社の31.09%の株を保有する大株主となって、役員も派遣していました。ところが早くも10月には破談。当時は回転ずしチェーンとしては古参のかっぱ寿司が業界1位だったので、この頃のカッパは余裕だったのでしょう」(経済ジャーナリスト)
ちょうどこの時、回転ずし業界内部ではおかしな縁があって、同じ3月には「お家騒動」があった「あきんどスシロー」(当時)の主要株主から株式を購入して、ゼンショーが一時27.22%の筆頭株主になっていたこともある。
そして時は流れて、業界トップだったかっぱは2011年にはスシロー、くら寿司、はま寿司で進んでいた店舗オペレーションの合理化で完全に差をつけられて業界4位に転落。14年から現在のコロワイド傘下になって、追い上げを画策しているところだった。
「ここ最近では、スシローとくら寿司が10月から値上げをして100円(税別)の皿がなくなりました。一方、5月に値上げに踏み切ったはま寿司は価格の据え置きと1皿100円を残し、かっぱ寿司は完全に逆バリで100円の種類を拡充して、1皿100円でははまとかっぱが正面対決といった状態にありました」(同)
そうした複雑な関係にあって発覚した今回の事件。因縁は深そうだ。
(猫間滋)