生活用品大手のアイリスオーヤマは、急激な円安による原材料価格や輸送費の高騰を受け、中国の工場で生産している日本向け製品のおよそ50種類を国内工場へ移すことを決めた。生活雑貨ライターが解説する。
「移管を決めたのは、大連など中国の4工場で生産していたプラスチックの衣装ケースなどの収納用品や園芸用品などで、埼玉、佐賀、滋賀の国内3工場で生産が行われることになります。9月には埼玉県深谷市の工場に6種類の金型が中国から到着しており、間もなく生産が開始されるといいます。なお、移管によりコストは2割ほど削減できる見込みで、今後は国内生産に切り替える商品をさらに増やすことも検討していくとしています」
ところが、こうした措置に失望する声があがっているのだ。
9月14日にアイリスオーヤマの国内工場移管を「NHK NEWS WEB」が報じると、翌15日にはスポーツコメンテーターの為末大氏がこの記事を引用しつつ、《中国よりも日本で作ったほうが安くなりました》と投稿。すると、ネット上では《国内回帰といえば聞こえはいいが、ようするにそれだけ日本が他国に比べて安い国になったということ》《かつて労働力が安かった中国は世界の工場となっていたが、今後は日本にファーウェイやシャオミの工場が次々と作られるかもしれない》《円安もあるだろうけど、人件費も日本の方が圧倒的に安くなったもんな。悲しい現実だ》など悲観する声も多く見られた。
「海外では物価も給料も上がっていく中で、最近の急激な円安もあって『安い国ニッポン』であることが顕著になっています。ただ、自分の国が安いということがショックなのもわかりますが、パナソニックやマツダなど国内に生産移管をするところも増え、これにより雇用が生まれ、商品の質が向上するといったメリットも少なくありません。国内回帰によってまた世界と戦える競争力を高めていければいいという見方もできます」(経済ジャーナリスト)
日本が本当に「安い国」となってこのまま衰退してしまうのか、あるいは「MADE IN JAPAN」の復活となるのか、正念場ともいえそうだ。
(小林洋三)