中尾彬「お菓子コンクールで長く見つめたら…」/ガタガタ言わせろ!(2)

 とある皇室の方の話も聞いたことがある。ありがたいけれど、大量の贈り物をどう処理していいのかわからないらしい。

 津々浦々から集められたお菓子のコンクールに参加された時のこと。側近から「それぞれのお菓子を20秒ずつ見つめてください」と、教えてもらったというんだ。側近が見る秒数を決めているんだって。

 ところが、あるお菓子の見た目に惹かれてしまい、30秒見つめてしまった。そうしたら翌日、紋付き袴姿の男性が来て、「推薦していただきましたお菓子です」と、お菓子を持参してくださったそうで。

 ありがたく受け取ったそうだけど、その後どうなるかと言うと。ニュースなどで「こちらは宮家に納められているお菓子です」と紹介されて、お店の看板や包装紙にも、名前が記される。たった10秒間、長く見つめただけで、ですよ!

 著名人がテレビ番組で絶賛すると、食べてもいないのに無条件にそのコメントを信じてしまって、購入する人っているでしょう? 美味しいか、美味しくないかを感じる味覚は人それぞれのはず。だから、責任を持てないという意味でも安易に「美味しい」とは言わないようにしている。現に「中尾さんがお気に召されているようなので、買いました」と言われたことがあるし。

 大量の贈り物をいただいて、わが家では2人で考えたんですよ。お礼やお中元、お歳暮を贈る時は、ほんの気持ちを示すだけの「しるし」の意味で、「心ばかり」という一文を、手紙にしたためようと。

 例えば佃煮を贈るとしてもごく少量を選ぶ。その上で、「心ばかりの品ですが」と書き添える。「これだけ!?」と、ケチだと思われてもいいんですよ。贈られる側の経験者としては、食べきれない量をもらうと「完食しなければ」というプレッシャーになることがわかっているから。相手が「ちょっと足りないかな」と感じるぐらいが、粋で洒落ているような気がする。

 私たち夫婦が実践しているからこそ、あえてガタガタ言わせていただきたい。大量すぎる贈り物は「ありがた迷惑」ではないし、実際にありがたいけれど、「ありがたみ」が「迷惑」になってしまうこともある。

 要は、数や量を減らしてほしいんだよね。いつも私たちに良質な食材を送ってくださる方々がこの記事を読んで、減らしてくださるといいなぁ。つい、今日は本音を語りすぎてしまったかな(笑)。

中尾彬(なかお・あきら)俳優。1942年8月11日生まれ、千葉県出身。映画「極道の妻たち」、「ゴジラ」シリーズ、北野武監督の「アウトレイジビヨンド」やNHK大河他、バラエティー番組のコメンテーターなど幅広く活躍。

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