中尾彬「血液検査の結果は通信簿を読む感覚と同じ」/ガタガタ言わせろ!(1)

 今回はまず、皆さんに質問したい。毎月、健康チェックと称した血液検査を受けているかい?

 毎月だとハードルが高いかもしれないけれど、最低でも2カ月か3カ月かに1回は受けたほうがいいと思うよ。できれば60代に入ったらすぐに。

 私は今年8月で80歳になったけど、60代半ば頃だったかな。高熱で体調不良を訴えたら、救急車で搬送されて。診断名は、急性肺炎と横紋筋融解症だった。ICUで絶対安静の状態になって気づいたんだ。自分の体力に過信していたな、と。

 以来、毎月一度は、病院で血液検査を受けている。体に不調を覚えなくても、必ず。

 70代、80代になると、ほとんどの人間は体のどこかが悪いんだよ。健康なはずがない(笑)。私もおそらく、どこかが悪くなるんだよ。たとえ自覚していなくても。老化した自分の肉体に、「お前はもっと強靱だったはずだろう?」と怒りたくなることもあるけど、そこは年齢と真正面から向き合うと腹をくくった。

 今は血液検査の結果を見るのは、通信簿を読むみたいで毎月楽しみだよ。「水分の摂りすぎは心臓によくないですよ」と主治医から用心を促される月もあれば、「糖尿も出ていません。お元気なお体ですね」と褒められると安心する日もあって。どの数値がプラスで何がマイナスなのかを見るのが楽しみですよ(笑)。長年、定期的に続けていると、たとえ結果が悪くても怖くはないし。血液検査は私にとって、心の安定剤になっている。読者の皆さんにもぜひ、オススメしたい。

 年齢を重ねたら健康維持が第一だからね。私はコロナワクチンの接種ももう、4回目を済ませていますよ。だからといって、周囲に接種を強要するつもりはない。もしカミさん(池波志乃)が「打ちたくない」と言えば、「そうですか。ご自由に」と、その選択を否定はしない。打つ、打たないは本人の自由だからね。単に注射が嫌いなだけかもしれないし。

 ただ1つだけ疑問なのは、人類が初めて接種するワクチンで、打ってもいないのに「体質的に合わない」とか、「アレルギーが出るから」などと言って接種を避けている人たち。酒を飲んでみたら体に合わなかったとか、甲殻類を食べたらアレルギー反応してしまう体質だったとか、試してみてダメだったと言うならわかるんだよ。だけど、どうして接種する前から自分に合わないとわかるんだろう? 初のワクチンだから、接種した人間にどんな未来が待ち受けているのかは誰も知らないけれど、不思議なんだよ。「自分は打ちたくなかったけれど、高齢の親を安心させるために接種した」なんて意見を聞いたことがあるけど、「あっぱれ!」だと思ったよ。

 私がこんな考えに至ったのは、コロナで逝去した千葉(真一)ちゃんも一因かな。彼は高校時代の先輩で、千葉ちゃんが日本体育大学在学中は器械体操部のコーチとして高校によくやって来ていた。

 あとから聞いた話だけど、千葉ちゃんはワクチンを一度も接種していなかったらしいじゃないか。副反応が怖いからといって。元器械体操のオリンピック候補選手で、役者としてはアクションスターとしても活躍していたから、体を大切にしながらも過信していたんじゃないのかな。個人的な推測にすぎないけど、コロナウイルスを重度の風邪程度と捉えていたのかもしれない。それが、残念でならなくて。「慎重に慎重を重ねる」が、シニアが健康に暮らす基本だと私は考えているから。

中尾彬(なかお・あきら)俳優。1942年8月11日生まれ、千葉県出身。映画「極道の妻」、「ゴジラ」シリーズ、北野武監督の「アウトレイジビヨンド」やNHK大河ほか、バラエティー番組のコメンテーターなど幅広く活躍。

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