中尾彬「20年以上『食日記』をつけているんだ」/ガタガタ言わせろ!(2)

 健康上の問題で日常生活が制限されることなく送れる期間、いわゆる健康寿命を長くするためには、食生活に重きを置くこともとても重要だと思っている。いくら平均寿命を超えて生きても、健康に暮らせなければ意味がないから。

 食生活が大切だと言っても、季節感とバランスを考えて作ってくれるのはカミさんだけどね。毎晩、寝る前に伝えているんだ。「明日はこの献立が食べたい」と。ほぼ毎日、伝えた希望を叶えてくれるから、頭が上がらないよ。それこそカミさんには、ガタガタなんて言えない。

 なるべく前夜に伝えるようにはしているけど、時折あるんだよね。「今日は何を作ろうかしら」なんて日が。そんな時は、私が20年以上記している、食日記の出番。3食、食べたメニューしか書かないよ。レストランで外食をしても、もらってきたメニューを書き出すだけ。味の感想は書かない。簡単じゃないと挫折してしまうから。

 1年間で1冊だから、手帳に20冊は書き溜めていると思う。

 私の中では、旬の食材をいただくのが一番のご馳走なんですよ。だからカミさんがメニューに困っていたら手帳を取り出して、「〇年前の今日はこれを食べていたよ」と伝えている。カミさんのメニュー考案の一助になるだろうし、旬の食材の季節感は毎年変わらないから。今後の気候変動で旬はどうなるかわからないけれどね。

 食日記をつけようと思ったきっかけは、コメディアン、故・古川ロッパさんの「ロッパの悲食記」(ちくま文庫)を拝読したから。ロッパさんは戦争経験者で、舞台と日記と食事に情熱を傾けていたから、読んだら食の大切さをつくづく痛感したんだよね。「生きるためには食を重視しないと」と、改めて思わされた。

 記し続けて実感しているけど、食日記はいいですよ。「なぜこの日にこのメニューを食べているんだろう?」と、当時を思い返すと、その時の体調まで鮮明に思い出せるから、現在の体調管理にも活かせる。

 血液検査と食日記は、私のように突然倒れたくなければやっておくべし!

中尾彬(なかお・あきら)俳優。1942年8月11日生まれ、千葉県出身。映画「極道の妻」、「ゴジラ」シリーズ、北野武監督の「アウトレイジビヨンド」やNHK大河ほか、バラエティー番組のコメンテーターなど幅広く活躍。

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