村上宗隆「令和の最強三冠王」への道【2】「落合の風格とバースの完成度」

 村上には、偉大なる先人たちの立ち姿に重なる部分が見て取れる。

「王さんの一本足打法には見た目の美しさ以上に威圧感を感じたものですが、村上の構えにも同様の圧があります。それでいて、落合を彷彿させる、どんな球にも対応する柔らかさも兼ね備えている。実際、内外角関係なく同じスイングを再現できています。外角はトップを後ろに残して逆方向、内角はトップを前にして引っ張る。フォームこそ全然違いますが、構えの段階では、王さんと落合の長所をミックスさせた雰囲気を持っているんです」(伊原氏)

 同様の見解を持つ、江本氏もこう分析する。

「これまでも、ただ体がデカくて打球が飛ぶだけの日本人選手はいくらでもいました。村上はパワーのみならず対応力もピカイチです。緩い変化球を放られてもしっかり下半身を残してスイングできますよね。8月16日の阪神戦で内野と外野の間に落ちる技ありのポテンヒットを打ったように、変にホームランに固執する打ち方でもありません。このスケール感と対応力の高さは、バースの完成度を想起させられますね」

 もはや、気鋭のスラッガーを測る物差しは従来の日本人選手の型だけに収まらない。他の三冠王にはない器の大きさも持ち合わせているのだ。野球評論家の松永浩美氏が解説する。

「どこか親分気質の強い昭和生まれの三冠王と違って、周囲への気配りができる男です。他人の打席にも、ベンチから人一倍檄を飛ばしていますよね。本来なら、自分の打席だけでメンタルがボロボロになってもおかしくありません。私が初めて村上の存在を知った小学生時代から、周りのチームメイトを盛り上げるように立ち回っていましたが、プロになっても変わらず、生まれながらの性分なのかもしれませんね」

 首位独走のヤクルトは、そんな村上を中心にしたチーム作りが功を奏しているのは誰もが認めるところ。

「阪急のブーマーが三冠王を獲得した時も、周囲には簑田浩二さんや私など巧打者の存在がありました。今のヤクルトも同様で、村上の前後の山田哲人、サンタナ、オスナら強打者の存在が相手投手に気の休まる場面を作らせない。かつて、西武が清原和博の爆発力を活かすためにデストラーデを獲得したように、核となる選手のパフォーマンスを上げるためにはチーム全体の打線の能力向上がマストです。シーズン序盤から優勝争いを続けるチーム力が村上の三冠王争いをフォローしているのも間違いない」(松永氏)

 リーグVと三冠王のW達成も夢物語とは言えまい。

*村上宗隆「令和の最強三冠王」への道【3】につづく

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