ヤクルトの村上宗隆といえば、昨季、NPB史上最年少で三冠王を獲得したこともあり、「近い将来のメジャーリーグ挑戦」が当然のように囁かれている。
「昨年オフの契約更改で『3年18億円プラス出来高』の大型契約を結んでいることから、『3年後に挑戦』というのが周囲の一致した見方です」(スポーツ紙記者)
当然、米スカウトも「2025年オフのポスティングシステム」を前提に調査しているのだが、今季前半の村上は「絶不調」だった。
8月9日時点で打率2割5分、本塁打21、打点59。昨季のような快音が聞かれないのはもちろんだが、米スカウトたちが気にしているのは「三振数」だ。99試合を消化し、123個の三振を喫している。もともと三振の多いタイプであり、三冠王を獲得した昨季も128個ある。しかし、これはシーズン141試合に出場しての数値であり、「99試合で123個は多すぎる」というのが米スカウトたちの評価だ。さらに…、
「三振の内容が良くないんです。ヤマを張って外れたのだと思いますが、慌ててバットを出して空振りするシーンが気になります」(ア・リーグ中地区球団スカウト)
内角に速いボールを放られ、外角の変化球を振らされているという。
「筒香嘉智に似ていると思います。体型もそうだけど、スイングパワー、ライナー性の打球を遠くに運ぶ力はメジャーリーグでもトップクラスに入りますが、直球に振り遅れているような…」(前出・記者)
「直球に振り遅れている」は、調査の重要ポイントになりそうだ。
7月12日の中日戦だった。この日、村上は「1試合2本塁打」を放った。周囲は復調を期待したが、村上自身は納得していなかった。ヤクルトの関係者が言う。
「村上の長所は逆方向(左右間)にもホームランが打てること。12日のホームランは2本ともライトスタンド。村上は本調子になっていないと捉えていました」
逆方向のホ−ムランについては、米スカウトたちは「広角に打てる」とプラスに見ているものの、「振り遅れたけど、力で(スタンドまで)運んだ感じもする」とし、評価を保留している米スカウトもいた。
「狙って逆方向に飛ばしているのならさすがです。左バッターがレフト方向に飛ばそうとすれば、バットとボールが当たるポイントが後ろにくるもの。逆方向に飛ばそうと意識しすぎて、速いボールに振り遅れているのかも」(前出・スカウト)
今季の不振の原因として、メンタル面をあげる声も多い。昨季の三冠王、56本目のホームランへの期待に応えようとし、平常心を失っているというものだ。
ともあれ、米スカウトは村上に関する最終評価を下していない。まずは不振を脱出し、本来の村上の姿を見せて欲しい。(了)
(飯山満/スポーツライター)