史上最年少で目指す、令和の三冠王への道。目下、最も懸念されるのは最後まで予断を許さない首位打者争い。果たしてコンスタントに安打を重ねることはできるのか。
「打席ごとに戦略を立てて臨んでいる姿勢がうかがい知れるだけに、突然大崩れすることは考えられません。プロ2年目から蓄積された1軍投手のデータが頭の中にインプットされているのでしょう。しかも、そのデータごとの打ち方を打席の中で瞬時に再現してしまう。すでに、今の日本球界にストレスを感じるような対戦投手はいないかもしれない。引き続きホームランだけでなく安打も量産できるはずですよ」(松永氏)
首位打者はおろか、トップのDeNA・佐野に2本差に肉薄する最多安打のタイトルまでが視界に入ってきている。
さる球界OBは、今回の戴冠レースと1965年の野村克也の三冠王を重ね合わせて振り返る。
「戦後初の三冠王が生まれた当時の熱気と似ている。ノムさんと競っていたのは阪急に所属していたスペンサーで、プロ野球ファンのほとんどに『三冠王は日本人』という想いが浸透していて、日増しに球界全体でノムさんを応援する声が大きくなっていた。8月中旬の時点では、スペンサーのほうが6本多くホームランを打っていたが、不幸なことにシーズン終盤にオートバイの事故に見舞われて欠場。結果、ノムさんが三冠王になった。同じ空気感が漂う今、どこまで村上の記録を後押しするかどうか」
次々と大記録を更新する〝村神様〟の成長曲線は天井知らず。こうなれば単なる三冠達成と言わず、日本人初の王超えとなる56号以上の本塁打を打ってもらいたいものだ。
「かつて江夏豊は『王さんには詰まってもホームランにされた』と。それによって心が折られたエピソードを話していたが、村上の場合は完璧に真芯で捉えられてスタンドまで運ばれてしまう。投手からしたら潔い打たれ方かもしれないけど、それこそダメージは大きいですよね」(江本氏)
取れるタイトルを総なめにしてもらいたい。期待値も天井知らずなのだから。
*「週刊アサヒ芸能」9月1日号掲載