業界屈指の映画マニアを唸らせたのは誰か!? 性愛描写にも造形が深い映画コメンテーターの有村昆氏が選ぶ、ベスト・チラリズム女優が演じた至福の名場面ベスト5を以下─。
「チラリズムと聞いてすぐに思い浮かんだ映画は、『モテキ』(11年、東宝)でした」
有村氏が開口一番、挙げたのは、森山未來相手に悶絶級の思わせぶり女性を演じた長澤まさみだ。
「まず長澤さんの女友達を含めた3人で森山家で宅飲みします。女友達が寝てしまうと、長澤さんがキスをせがむような仕草を‥‥『シテいいのか!?』というところで女友達が起きてしまうという寸止め感、もうたまりません」
さらに友人が帰宅すると、チラリズムアングルが加速。生々しい臨場感に感情移入すること必至なのだ。
「森山さんの主観映像でもあるカメラが、ショートパンツの長澤さんの太腿をじっくりと映し、そのまま始まってしまう雰囲気を出してくる。『一緒に寝る?』というセリフも繰り出しますが、結局森山さんは手が出せずじまい。僕らの時代のバイブルとして君臨するチラリズム漫画『BOYS BE…』を彷彿させる、男性を翻弄する女性の魅力が体感できる作品です」
次に選んだのは、「アイドルから女優に転向してから『モスラ2』(97年)や『少林少女』(08年)などに出演したが、パッとしなかった」という満島ひかり(36)の出世作「愛のむきだし」(09年、ファントム・フィルム)だった。
「壮絶なチラリアクションの連続! 西島隆弘さん演じる盗み撮りマニアの女装姿に恋をするというぶっ飛んだ設定をモノともしない、清々しく思い切りのよい演技です」
満島は、露骨なローアングルカメラに向かい足を蹴り上げるほか、女装した西島を思い、手で慰める行為に没頭するシーンで、白い綿の肌着に包まれた「秘部」を強調するところも推しポイントとなっている。
「男はみんな中学時代の妄想をかなえたいといいますか、誰もが風でめくり上がったスカートの中身に夢を描いているじゃないですか。それが、この映画での満島さんのパンチラなんです」
カンヌを制した「万引き家族」(18年、ギャガ)も珠玉のまぐわいシーンがあるという。
「安藤サクラ(36)が尋常じゃなく艶っぽいのです。リリー・フランキーさん演じる夫と、じっとりとした畳の部屋で、シミーズ1枚でそうめんをすするシーンがあります。リリーさんが『この下着いいな』などと言い『1980円。見えないでしょ』などイチャイチャしだす。そのうち雨がザーッと降りだすと、安藤さんがそうめんを頬張りながらリリーさんを押し倒し、そうめんつゆがテーブルから畳に滴る中で夫婦の営みが始まるのです」
汗がにじむ肉体と性の欲を、リリーとぶつけ合う安藤の背中には、そうめんの薬味のネギがぺっとり。
「ネギまでの一連の演出が素晴らしすぎる! 安藤さんはむちっとしたどちらかというとだらしのない体型で、それが思わず触りたくなる色香を放っている。正統派美人ではないからこそ、底知れない魅力のある女優さんです」
有村氏の意見に同意する読者も多いだろう。
他にも、バストトップを露わにしている映画の中にもチラリズムを感じさせる名場面がある。ピックアップしたのは、
「『恋の罪』(11年、日活)の水野美紀さん(48)。脱ぐのは冒頭のみで、その後はずっとチラリズムです。僕が忘れられないのは、アンジャッシュ児嶋一哉さん演じる不貞相手から、夫がいる自宅で突然キスをされるシーン。あの背徳感には筆舌に尽くし難い艶っぽさがありました。その後の児嶋さんと電話をしながら独りで慰める行為をするシーンも、一切脱いでいないのに、あの色香はなんなのでしょうか!」
そして有村氏がラストに挙げるのは「ヘルタースケルター」(12年、アスミック・エース)での沢尻エリカ(36)だ。
「男性が撮ると生々しくなってしまいますが、蜷川実花監督の感性で、綾野剛さんや哀川翔さんなどを相手にした沢尻さんの性愛シーンが美しく昇華されています。売れっ子モデルが徐々に堕ちてゆくというストーリーも、本作で圧巻の復帰を見せつけ、NHK大河ドラマレギュラー役に上り詰めた矢先、薬物事件で芸能界引退状態になった沢尻さんとリンクし、なんとも考えされられますよね」
そんな沢尻含め、有村氏が挙げた5人には共通点が見て取れるという。
「長澤さんはキャリア低迷中のキャラ変として、満島さんは起爆剤として、水野さんは大手事務所を辞め芸能界の闇にもがいていた時期があった。様々なバックボーンを背負った上でのチラリズムなんです。だからこそ、脱がずとも人の五感に訴えかける魔力を持っているのです」
今や主流のチラリズムの性シーンこそ、女優の艶気を体現していると言えそうだ。
*「週刊アサヒ芸能」9月1日号掲載