W杯「アジア枠拡大」は百害あって一利なし!? 日本人の“サッカー離れ”に拍車

 8月1日、アジア・サッカー協会は2026年W杯(アメリカ、カナダ、メキシコの3カ国で共同開催)の予選の方式を発表。出場国が現行の32から48に拡大。それによってアジア枠が従来の「4.5」から「8.5」に増加する。

 W杯7大会連続出場中の日本代表にとっては、今まで以上に本大会出場の可能性が広がったというよりも「W杯は出場して当たり前」の大会になりそうだ。だからといって手放して喜んでもいられない。このアジア枠の大幅増加によって、日本国内でのサッカー離れに拍車がかかるのではないかという不安の方が大きい。

 なぜなら、今回のカタールW杯アジア予選を振り返ってみると、格下相手の2次予選ではテレビ視聴率がひと桁に落ち込む試合もあった。最終予選前にはDAZNがアジアサッカー連盟と2028年まで契約を結び、W杯アジア予選及び各大会の放映権を獲得。テレビ朝日が個別に交渉し、最終予選のホームゲーム5試合を地上波で放送できたが、本大会出場を決めたアウェーのオーストラリア戦はDAZNが独占放送し、全国ネットの地上波で放送できなかった。

 つまり4年後の2026年W杯アジア予選もDAZNが放映権を持っている。格下と対戦することが予想される2次予選を交渉して放送する民放はないだろう。最終予選になれば、交渉次第で今回のようにホームゲーム数試合を放送できる可能性はあるが、アジア枠が8.5に増えた中で、最終予選とはいえどれだけの視聴率が取れるかは未知数。試合内容によってはサッカー離れがさらに進む可能性さえある。

 アジア枠増加になった今こそ、サッカー人気を回復するために何をしなければいけないか、何が必要かを真剣に考えないとメディアからも世間からもそっぽを向けられてしまう。

(渡辺達也)

1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。

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