安倍氏の後継は誰に?「山口4区」補選があらゆる意味で注目集める

 凶弾に倒れた安倍晋三元首相の不在で政権運営がどうなるのかが大きな政治テーマだが、すると当然、山口4区が空席となったので、そこをどう埋めるかも一テーマとなってくる。

「早ければ10月23日に補選が行われることになりますが、公職選挙法の規定では関係する訴訟が行われている場合には補選は行えないとされているので、最高裁で争われている昨年の衆院選でのいわゆる『1票の格差』問題訴訟の判決が9月15日までに出なかった場合には先送りになるので、来年の4月23日に行われる公算が大きくなっています」(全国紙記者)

 だが、まさか安倍元首相が亡くなるとは想定外なので、誰も今後のことは分かるはずがない。考えられるのは親族が引き継ぐことだが。

 その場合、安倍元首相の周囲を見渡してみれば、兄に元三菱商事子会社社長などを務めた寛信氏がいるが、70歳と高齢だ。弟の岸信夫氏は防衛大臣。安倍元首相には子供がいないので、兄弟の子供ということになると、寛信氏に寛人氏、岸信夫氏に信千世氏がいる。31歳の信千世氏は慶應卒でフジテレビを経て、現在、父・信夫氏の秘書官を務めているので、安倍氏の跡目になるのではないかと目されている。

「ただその場合、心配されるのが信夫氏の健康問題です。昨年9月に防衛相の公務を一時取りやめた際に『尿路感染症』と発表されて以来体調が思わしくなく、今年の頭は1本だった杖がやがて2本に増え、今や車いすに。会見でも言葉が不明瞭な場面もあり、心配されます。最終的にはゴッドマザーとして知られる安倍洋子さんの判断を仰ぐ可能性が高いんでしょうが、とすると信夫氏の次男で29歳の岸智弘氏も可能性として浮上してきます。こちらも慶應卒で大手不動産会社勤務ですが、洋子さんは智弘氏を養子に取って安倍氏の跡を継がせると考えていると報じられたこともあります」(政界関係者)

 ところが問題は後継者問題だけにとどまらない。やはり「1票の格差」問題を解消するために10増10減の区割り案の法案が今後審議されることになるが、成立すれば山口県は現在の小選挙区4が3に減る。とすれば、補選は現行の区割りのまま行われるので、一時の“つなぎ”でしかなくなる。そして1区の高村正彦元自民党総裁の跡を継いだ高村正大氏、2区の岸信夫氏、3区の林芳正外務大臣、4区の安倍氏後継者の間で玉突きが行われる。

 さらに厄介なのはどこかのタイミングで解散が行われた場合だ。アンケートによっては70%近い内閣支持率が出た6月頃から「年内解散」説も出始めたからだ。

「国内外のあらゆる状況が節目にあって、かつ、安倍氏がいなくなったことで再編含みの政界、そして今後3年間は大型選挙がない『黄金の3年』を手にした岸田首相は、長期政権確立のために早期の解散総選挙に打って出る可能性があります。そこでもし年内解散となれば、補選は行われずに現在の区割りのままの選挙となって、つなぎは固定化したまま問題が先送りになってさらに厄介な事態に陥るでしょう」(同)

 安倍氏の急逝により、あらゆる所で混乱の蓋が開き、どう収拾をつけるかが課題となっている中、山口選挙区の玉突き問題は最大の難所の1つだ。

(猫間滋)

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