7月5日、ウィクラマシンハ首相が財政破綻を宣言したスリランカ。これは08〜09年にリーマンショックの影響などで破綻寸前となったギリシャとアイスランドを上回る事実上の国家の破産。でも、実際に国民の生活にどんな影響があるのだろうか?
実は、5月19日にスリランカ中央銀行のウィーラシンハ総裁が「デフォルト(債務不履行)と見なせるだろう」と述べ、デフォルト状態あるとの認識を示しており、これに伴い国際金融市場から締め出されている。その結果、米ドルやユーロといった外貨はほとんど底を尽き、支払い能力を失って海外との取引ができない状態に陥った。
「食料品をはじめとするあらゆる物価が上昇を続ける一方、賃金は据え置きで給料の未払いなども増えています。庶民の生活はますます厳しくなり、現地では市民による略奪なども起きています」(全国紙記者)
さらに公立学校は臨時休校が続き、公務員も自宅待機。ほぼすべての業務がストップし、国が運営する医療機関も例外ではない。
「私立病院は高額で富裕層向けのため、治療を受けられずに亡くなる人もいるようです。さらにこれまで輸入に頼っていた医薬品も不足し、持病を持つ方への薬の処方が難しくなっています。また、深刻な燃料不足によって検査や手術なども行えない状態です」(同)
原油の輸入も中断されたままでリッターあたりのレギュラーガソリン公定価格は470ルピー(177円)。平均月収が約2万円なのに日本よりも高く、70年代にわが国を襲ったオイルショックの比ではない。
それでもガソリンや灯油はほぼ枯渇。発電用の燃料やガスも手に入らないので市民たちは薪で煮炊きし、ロウソクの灯での生活を強いられている。
「日本もエネルギー資源を輸入に頼る以上、経済が破綻すれば生活は苦しくなるでしょう。今のスリランカのような状態になる可能性はほとんどありませんが、決して他人事ではないのです」(同)
首都コロンボでは大規模なデモが発生。大統領公邸を占拠し、私邸には火を放つなど治安も悪化。ロシアや中国に支援を要請しているが、彼らの傀儡国家になるとの懸念もある。
いずれにしても混乱は簡単に治まりそうな気配になく、今後の情勢を注意深く見守りたい。
*写真は世界遺産「シギリヤロック」