米の独り勝ち? ウクライナ情勢の“蝶効果”で債務不履行、暴動の国が続出!

 バタフライ・エフェクト(効果)という理論がある。蝶が羽ばたく程度の非常にかすかな力が要因となり、遠くの方で大きな影響を及ぼすという、カオス理論の予測困難性を表す考え方だ。一般的に用いられると、ほんの些細な事柄ががきっかけとなり、遠くの場所で形を変え大きな事態を引き起こすといったような意味だ。NHKの映像で歴史を紐解く番組『映像の世紀』でも、この言葉が用いられている。サブタイトルは「あの日があるから今がある」だ。

 今でも毎日のニュースはウクライナ情勢が多くを占めているが、一方で国を挙げての大変な騒ぎになっているのがスリランカだ。

「もともと観光や紅茶の茶葉の輸出が主だった産業でしたが、コロナ禍と世界的な資源・食料高で経済が崩壊、4月12日はデフォルトに陥りました。頻発するデモは治まることを知らず、大統領一族がその座に居座る以外は全閣僚が辞任、収拾がつかない状況にあります」(全国紙記者)

 このスリランカの動きこそ、ウクライナでの蝶の羽ばたきが引き起こした「バタフライ・エフェクト」だと見られている。ロシアのようにガスの支払いをルーブルで要求するような悠長な話ではなく、昨年12月にはイラン石油公社に対して輸入した石油の支払いを紅茶で行うとしたほどだ。諸外国も物価の値上がりに喘ぐが、経済基盤の薄い国ではすぐさま国家財政が傾くまでになるのも当然だ。

「その他でも、エジプトはインフレが10%を超えてイラクでは小麦粉の値上がりから暴動が起きています。ペルーでも燃料価格の急騰から反政府デモが起こって6人が死亡、パキスタンでは首相の不信任案が可決されるなど、バタフライ・エフェクトというしかない動きが多発しています」(同)

 国連のグテーレス事務総長は「5億5300万人が貧困に陥り、2億1500万人が栄養不足」としている。

 となると国際的な不信の矢面に立たされざるを得ないのがアメリカだ。EU各国は地続きで安全保障の問題が絡むが、海の向こうにありながらウクライナ支援に一番積極的なのがアメリカだからだ。しかも資源・食料保有国でかつ武器輸出国だ。

「アメリカは今や世界最大の産油国です。インフレで庶民は大変でしょうが、制裁の中身にアクセスできるアメリカの投資筋にとってはビジネスチャンス。さらには今後は、安倍元首相が盛んに唱えているような『防衛費2%』の枠を撤廃したい日本も含め、軍産複合体のアメリカ企業にとっては世界的にお得意先が増えることになります」(経済ジャーナリスト)

 現在の「アメリカ独り勝ち」の状況に、アメリカ悪者説が出始めている。戦争が長引けば長引くほど、その怨嗟の声も高まるだろう。

(猫間滋)

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