「老後資金2000万円」貯めるちょっとグレーな蓄財術(1)「100年安心」は大ウソだった

 老後に2000万円不足する─。波紋を広げる金融庁の報告書。よくよく読めば、年金だけでは生活できないから「現役時に資産を形成しろ」とある一方で、「十分に資産が作れなかったら、物価の安い地方に引っ越せ」と勝手なことまで書いてある。もう政府に任せてはいられない。少しぐらいグレーなことをしてでも、老後資金を稼ぐしかないのだ。

「正式な報告書としては受け取らない」

 6月11日の閣議後の記者会見で、険しい表情で切り出したのは、麻生太郎金融担当相(78)。やり玉に挙げたのは、金融庁の金融審議会が3日に発表した「高齢社会における資産形成・管理」という報告書だ。
 
17年の総務省家計調査に基づく試算として、無職の夫65歳・妻60歳以上の夫婦は、支給される公的年金だけでは「毎月約5万円の赤字」になると分析。95歳まで生きるとすれば、約2000万円の蓄えがなければ豊かな生活はできない‥‥という内容だった。

 これに納得がいかない様子で、「政府の政策スタンスと異なっている」と憤ってみせた麻生氏。だが、1週間前にはこう言っていた。「人生設計を考える時に100まで生きる前提で退職金を計算してみたことあるか? 普通の人はないよ、たぶん。俺はないと思うね。今のうちから考えておかないといかんのですよ」

 さも立派な報告書ができたという口ぶりではないか。それが「老後2000万円不足問題」が連日、メディアで取り上げられたとたん、天にツバするように報告書を受理せず、臆面もなく「なかったこと」にしようとしているのだ。

 国会議員の元政策秘書で作家の朝倉秀雄氏は、あきれた口調でこう話す。

「役所の仕組みでは、金融庁が勝手に公表することは考えられません。事前に麻生氏にレクチャーしているはずですが、批判の声が高まったので金融庁に責任を押しつけ、夏の参院選に影響が出る前に、火消しに回ったということでしょう。07年参院選で『消えた年金』で惨敗した自民党にとって年金問題は鬼門ですからね。このまま放っておけば、自公政権がアピールしていた『100年安心』が大ウソだったとなりかねない」

 庶民だってバカじゃない。年金が頼りにならんことぐらいは、うすうす気づいていた。でも、いきなり2000万円という法外な金額をふっかけられて、愕然としているのだ。なのに、政治家たちは次の選挙しか頭にない。それもそのはず、センセイたちは余裕の生活ぶりなのだ。
 
17年12月に公開された閣僚の保有資産報告書によれば、麻生氏の総資産は断トツの5億2303万円。渋谷区にある自宅は「麻生御殿」と呼ばれるほどの大邸宅で、先の資産額は課税標準額で公表されていて、実際に売り飛ばすと10倍の価格になるという。資産家である麻生氏は金の使い方もハンパない。政治資金報告書にある飲食代は毎年約2000万円前後。経費とはいえ、実にうらやましいかぎりだ。朝倉氏が続ける。

「総理時代にカップ麺の値段を『400円くらい』と答え、金銭感覚が庶民とズレているのは明らか。永田町でも若手議員の時から、お金に困ったことがない政治家として有名でした」

 6月14日の衆院財務金融委員会で麻生氏は、自身が年金を受給しているかどうかを知らないと話し、

「年金がいくら入ってくるか、自分の生活として心配したことはございません」

 と言い放った。さすが、セメント事業や病院経営などの多角経営で知られる「麻生財閥」のボンボンだ。

 当然、安倍晋三総理(64)とて、金には困っていない。その総資産は1億396万円を数え、老後の心配なんて微塵もない。議員年金も年間400万円以上を受け取る(制度は06年に廃止も、権利を有する議員には今も税金から支給されている)ウハウハ特権を有することだし、どうもセンセイたちだけは「100年安心」ということらしい。

マネー