毎年、株主総会が集中する6月。28日には沖縄を除く大手電力9社の株主総会が開催されたが、9社すべてで株主から提出された「脱原発」の提案はことごとく否決スルーされた。株主提案は脱原発に限らずよほどの根回しがないと通らないので毎度のことではあるが、猛暑で電力がひっ迫するこの時期だけに、注目度は異なった。結果、東電の大株主である東京都のトップである小池百合子知事と関電の大株主である大阪市トップの松井一郎市長の振る舞いにSNSでツッコミが入れられることに。
特に小池百合子知事は歴代の東京都知事として初めて株主総会に出席。目立ちたがり屋で知られる彼女だけに、電力問題で日本中が揺れる中、ポイントを稼いで‥‥と行きたかったのだろう。
「小池知事は環境大臣時代にクールビズを流行らせたのが自慢の1つで、コロナでも『3密』や『5つの小』など、ワンフレーズ政治が得意な人。また環境つながりで緑色をイメージジカラーとしているように、脱原発派。そこで都として、『電力の安定供給確保』と『再エネ利用最大化』の文言を盛り込んだ定款の変更を提案しました」(全国紙記者)
ところが、そんなことが出来ていたのなら現状はこんなことになっていないわけで、つまりは理想論の絵空事だ。しかも華麗にスルーされたとあって、SNSでは「子供じみたパフォーマンス」「ド素人か」といった厳しい声が。
その小池知事、最近電力問題では「減らす」「創る」「溜める」の頭文字を取って「HTT」とお得意のワンフレーズを謳っているが、全く浸透していない。
関西では大阪市と京都市、神戸市が関電の大株主なので、3市共同で「水素の活用による脱原発」を提案。そして当然、こちらもスルー。
だが考えてみれば現在の選挙戦、松井一郎日本維新の会代表は原発再稼働を訴えているではないか。
「日本維新の会の公約としては、将来的に原発はフェードアウトという平凡なもの。しかし松井さんはロシアのウクライナ侵攻時から原発再稼働はやむなしとしていて、原子力規制委の審査や地元の同意はクリアしているものの、テロ対策設備の整備が終わっていない関電美浜原発3号機と高浜原発1、2号機を内閣の責任ですぐにも動かすべきとしていました。そしてそのことを踏まえて選挙演説では、私たちに力があれば原発を動かすのにと言って投票を呼び掛けています」(同)
市長としては「脱原発」で日本維新の会代表としては「再稼働」? するとやはりSNSでは「どっちやねん」「意味不明だね」といった声が上がり、選挙前の大事な時期、表と裏の使い分けで嫌われるのは避けたいということか。
(猫間滋)