腰の故障も癒え、マイナーリーグからの再スタートを切った筒香嘉智。実戦3試合目を終えた6月26日時点(現地時間)での打率は、5割7分1厘! 筒香は現地メディアに「自分のやれることをやる。良い準備を続けていく」と語り、自信を伺わせていた。
しかし、パイレーツは早くも来季に向けて舵を切っている。年俸400万ドル(約4億4000万円)、31歳になる筒香には“戻る場所”はないかもしれない。
「腰の痛みを訴えるまでの成績は酷すぎました。打率1割7分7厘、本塁打2。パイレーツがトレード先を探しているとの報道もありました」(現地記者)
地元メディアから「sunk cost」と酷評されたこともあった。直訳すると「回収の見込みがない支出」。腰の痛みを隠していたことが分かると、ファンの見方も変わったそうだが、パイレーツは筒香が故障者リスト入りした直後に、複数のポジションが守れるチャン・ユーチェンを金銭トレードで獲得している。
また、筒香が務めてきた一塁、DHには、肘を痛めていたマイケル・チェイビスが入っている。チェイビスは打率2割4分台だが、長打率は4割強。まだ26歳で、「育成」「再建」の過渡期にあるパイレーツが、どちらを重視するかと聞かれれば、若いチェイビスのほうだろう。
「それでも、今年のパイレーツは故障者が多すぎます。筒香は必要な戦力」(同)
そんなふうに筒香を擁護する声も聞かれたが、思い出されるのが昨年8月の出来事だ。
昨年8月といえば、レイズを追われ、ドジャースに移籍し、不振脱出のきっかけを掴みつつあったころ。しかし、右ふくらはぎ痛め、ドジャースは「無理をすべきではない」と“優しく”諭して、筒香を故障者リスト入りさせた。故障も癒え、マイナーで再スタートを切った直後だった。メジャーリーグ昇格が可能な40人枠から外されてしまったのだ。
その後、パイレーツに拾われたが、現在の雰囲気が「昨年8月」とソックリなのである。
「26日の試合後、球団首脳陣と今後のプログラムを話し合ったそうです。プログラムとはメジャー昇格までの道程表みたいなもの」(同)
この時期、マイナーリーグでは昇格の可能性のない選手を整理する。解雇通達の理由は、実力よりも年齢。秋山翔吾が帰国を決めたのもそのためだが、筒香が「昨夏の悲劇」を繰り返さないことを祈るばかりだ。
(スポーツライター・飯山満)