秋山翔吾外野手の広島入りが波紋を呼んでいる。グラウンド外でも交流の深いマエケンこと前田健太投手が「古巣広島に働きかけた説」も出たが、“西武愛”が強すぎたというのが真相のようだ。
「2019年1月、現役ドラフトの件で選手会側と12球団代表者による事務折衝がありました。選手会側の出席者の中に秋山がいて、その理路整然とした説明、人当たりの良さなどに、広島代表の鈴木清明球団本部長が感心していました」(球界関係者)
その鈴木代表が今回の獲得交渉役を務めたのも、何かの縁だろう。
また、2015年11月、プレミア12大会の調整で秋山は若手に混じってフェニックスリーグの試合に出場していた。そのとき、松田元オーナーも観戦しており、広島OBが秋山を紹介したという。
松田オーナーも好印象を抱いたそうだ。こうした西武時代の接点を聞かされると、広島が秋山を獲得したのは、単に戦力アップを狙っただけではなかったようだ。
しかし、こんな情報も聞かれた。秋山のもとには広島、ソフトバンクから「会いたい」の連絡が帰国前から届いていた。秋山はその返事をいったん保留した。古巣・埼玉西武と、いちばんに会わなければならない。秋山の義理堅さである。6月22日に西武、翌23日にソフトバンク、24日に広島と決まった。
「渡辺久信・西武GMの気持ちは痛いほど伝わってきました。でも、若手が外野のレギュラーを掴もうと必死に頑張っているのも聞いていたので、申し訳ないとも思ったそうです。ソフトバンクに行ったら、古巣と戦うことにもなり、やりにくいとも考えていました」(球界関係者)
広島なら、古巣との直接対決は交流戦だけだ。もっとも、消去法で広島を選んだわけではない。広島は黒田博樹氏の帰還後に若手投手が成長したことを指して、秋山にもチームリーダーになってほしいと伝えたそうだ。その言葉に「セ・リーグ挑戦」を決意した。
古巣の後輩たちの出番まで気に掛けるほど「西武愛」が強くなければ…。渡辺GMもそこまでは考えつかなかったようだ。
(スポーツライター・飯山満)