記録的な暑さが続いているが、太陽活動と関係があるのだろうか。
気温との関係はさておくとして、太陽の活動が活発化しつつあるのは確かなようである。ひと口に太陽活動と言ってもさまざまな観測対象があるのだが、いま注目したいのが「黒点」だ。
「太陽の表面に現れる黒い斑点で、およそ11年の周期で増減を繰り返していると考えられています。その周期を『太陽周期』と呼び、2019年から、観測が始まってから25回目の第25周期に入ったと見られます」(科学雑誌編集者)
なぜ黒く見えるのかというと、周囲に比べて温度が低く暗いからだ。温度が下がるのは強い磁場が通るためなのだが、強い磁場が発生することで起こるのが「太陽フレア」と呼ばれる爆発。
「太陽フレアは高エネルギー荷電粒子などのエネルギーやガンマ線・X線などの電磁波を放出します。それらが地球に到達すると、その規模によっては大きな影響をもたらすこともあるのです」(同)
どんな影響があるのか? もっとも危惧されるのが通信障害だ。総務省は6月12日に、大規模な太陽フレアが発生した場合の「最悪のシナリオ」を発表し、事前の対策を呼び掛けた。それによると、最大で2週間程度GPSや無線システムが影響を受け断続的に使えなく恐れがあるという。前出の科学雑誌編集者が言う。
「スマホが使えないといった程度で済めばいいですが、110番などの緊急通報が使えなくなったり、GPSの精度が狂うことで交通機関のみならず自動車のカーナビにも影響が出て混乱する危険があります。また、送電線やパイプラインに影響が出て大規模な停電が起こることも懸念されます」
実際、1989年には太陽フレアによる磁気嵐によってカナダのケベック州で大停電が起こり、パニックになっている。総務省によれば、今回想定される太陽フレアは100年に1回程度の大規模なものだという。前述したカナダの磁気嵐やそれより大きい太陽風にまさる、「太陽嵐」と呼ばれる規模になるかもしれない。NASAがのちに発表したところによると、2012年7月に巨大な「太陽風」が地球をかすめていたことが確認されている。もしこれが直撃してれば多大な損害を被っていたとされる。ちなみに、総務省が発表した想定では、今回の太陽周期における太陽フレアのピークは、2025年ごろだという。
「過度に恐れる必要はありませんが、なにぶん自然相手なので先のことは規模や時期を含め予想の域を脱しえません。極端に想像を膨らませれば、原発の管理体制に支障が生じたり、あるいは核ミサイルの誤発射などといった破滅的な事態も絶対に起きないとは言い切れない。また、太陽嵐ないしは太陽風が人体にどのような影響を与えるのかも、まだ不明確なものがあります。備えあれば憂いなしで、できるだけの準備はしておいたほうがいいでしょう。総務省は黒点の状態などを伝える『宇宙予報士』の創設を提言していますが、少なくとも日ごろから空のもっと上のことまで気にかけるようになることが大切かと思います」(前出・科学雑誌編集者)
余談だが、太陽はおよそ50億年後には燃え尽きるという。太陽ぐらいの質量だと超新星爆発は起こさず膨張して赤色巨星になるそうだが、いずれにしても地球は一瞬にして消滅する。人類がその前に滅ばないようにしたいものだ。
(加賀新一郎)