これまで世界の中でも薬物の所持・使用を厳しく取り締まっていたアジア諸国。そんな中、タイは6月9日に、通称“ハッパ”と呼ばれる薬物の元になる「アサ」の家庭栽培を解禁した。これはアジアでは初の試みであり、世界各国がこの方針転換を大きく報じている。
今回の法改正はあくまで医療用に限定され、娯楽目的での吸引は引き続き違法。同国ではかねてより痛み止めや疲労回復のためにアサを使用する習慣があり、2019年には医療・研究目的でのアサの使用を合法化。今回は、タイ全土の世帯へ100万本の苗を配布することも決定している。
「娯楽目的の使用は違法としていますが、厳格に取り締まれるかといえばかなり微妙。疾病治療という名目にすれば使うことは可能のようで、タイ国内のニュースやSNSでは堂々と乾燥させたアサを吸っている人たちの映像が流れています。しかも、アサ入りの飲み物や食べ物の販売も可能となり、多くの飲食店で新メニューが発売されています」(タイ在住ライター)
近年、海外では合法化の流れに傾きつつあるアサ。米国では12年のコロラド州とワシントン州を皮切りに、現在は首都ワシントンと18の州で嗜好用の販売が解禁。さらに13年にはウルグアイ、18年にはカナダで合法化。また、EU圏では昔から合法の国として知られていたオランダ以外にも少量の所持なら罰しない、または軽微な罰金刑にする国が増えており、スイスのようにタバコ同様税金を上乗せして販売する国もある。
「タイのチャーンビラクル保健相は現地メディアの取材に対し、『治療のためなら問題ないが、外国人が自由に吸うためにタイに来るのは間違いだ』と語っていましたが、これもどこまで取り締まる気があるのか疑問。現に9日以降、バンコク市内では外国人たちが明らかにハッパと思わるものを吸引している姿も多数目撃されています」(同)
タイ政府は今回の合法化について「経済の活性化」を理由のひとつに掲げている。どの程度の経済効果が期待できるのかは気になるところだが、300億バーツ(1160億円)を超えるとの試算もあるという。
今月から入国規制がほぼ撤廃され、コロナ前に近い形での訪問になったタイ。今後はハッパ目的に訪れる観光客が増えることも予想されるが、あくまで医療用に限定されることを忘れずに。
(トシタカマサ)