能力の方向性は一定ではありません。パワーとスピードが動力として相反するのと同じように、競走馬の能力もパワーとスピードは相反する部分があります。
宝塚記念は、ダービーやジャパンカップとは要求される能力が相反する面もあるレースで、距離はクラシックが行われない2200メートル。加えて直線も短く、タフな馬場。東京芝2400メートルとは異なる方向性の血を持つ「馬力型」の「欧州型血統」が能力を開花させやすいのです。
また、20年近く発言していますが、宝塚記念に限らず、芝2200メートルの小回りコースは、日本の「反主流血統」が走りやすい条件。
京都芝2200メートルで行われるエリザベス女王杯も、サンデーの血を持たない「欧州型血統」のスノーフェアリーが10年、11年を連覇。02年に中山2200メートルで行われたジャパンカップは、海外馬(9人気ファルブラヴと11人気サラファン)が1、2着を独占。それ以来、海外馬のワンツーはありません。
昨年の宝塚記念も1〜3着は父の血統国別タイプが全て欧州型(全出走馬の国別血統タイプは亀谷HPでレース前に無料公開しています)。父が欧州型でサンデーサイレンスの血を持たない馬は、4頭しか出走していませんでした。
一昨年の勝ち馬サトノクラウンも欧州型で、サンデーサイレンスの血を持たない馬。2着ゴールドアクターも父は欧州型です。今年の宝塚記念も、クラシックに勝利実績がなく、欧州型の血が濃い馬を狙うアプローチが定石になります。
スティッフェリオは、父がステイゴールド。サンデーサイレンス系ではありますが、宝塚記念には相性がよく、過去10年で産駒が5勝。ステイゴールドは、凱旋門賞でも連対馬を複数出している種牡馬で、宝塚記念のように欧州型ノーザンダンサー系の馬力が要求されるレースは得意。母父も欧州型のムトト。東京芝2400メートルではスピード不足の血統だからこそ、宝塚記念では狙いたい血統です。
クリンチャーの父はディープスカイ。リボーの影響が強く、タフな馬場を好む血統で、母父もタフなブライアンズタイム。実際、タフな馬場の芝2200メートルで行われた昨年の京都記念では、クラシックホースのアルアイン、レイデオロを負かしています。
やはり、競馬で要求される能力の方向性は、一定ではないのですねー。
亀谷敬正(かめたに・たかまさ)テレビ、専門誌などでカリスマ的人気の若手血統馬券師。HPはhttp://www.k-beam.com 推奨レース、期待値の高いデータ満載の出走表も配信中。コンビニのコピー機でも予想を配信(Eプリント 亀谷で検索)。