「米露戦」がサイバー空間で始まっていた!「攻撃的作戦」を米軍司令官が明かす

 武力衝突は第3次世界大戦の開戦につながるので是が非でも回避する。今回のウクライナ戦争で、ロシアとアメリカが外してはならないものとして守られている不文律だが、サイバー空間なら話は別。どうもそういうことのようだ。

 アメリカはウクライナへ射程80キロの高機動ロケット砲システム「ハイマース」の供与を決定。これに対しロシアのプーチン大統領は6月5日、西側諸国の長距離砲の提供に対しては「これまで標的としていなかった対象を攻撃する」として、脅しをかけた。ところがその翌6日にもイギリス政府が長距離砲の提供を決定して…と、ウクライナでの戦争は、ロシア本土を攻撃可能な長距離武器を巡ってチキンレースの様相を呈している。

 それでもアメリカのバイデン大統領は、当初予想されていた射程300キロの武器の提供は頑なに否定。第3次世界大戦の勃発だけは絶対に避けねばならないからだ。

 ところがサイバー戦では既に米露の戦いが行われていた。そしてこれはホワイトハウスの立場として矛盾しないのだという。

「近頃、英スカイニューズ・テレビがアメリカのサイバー軍の司令官のインタビューに成功し、そこで司令官は時期や内容についてはもちろん言及は避けましたが、ウクライナ支援のために『攻撃、防御、情報作戦という全領域にわたる一連の作戦』を行ったことを明かしました。サイバー攻撃は攻撃主体が分からないようにいくつもの中継地点を介して行われるもので、実際に攻撃したかどうかも含め実態は不明なもの。それを行ったと公に認めるのは異例です。そしてこの発言を受けて、記者が『直接的な衝突は望まない』というバイデン大統領の過去の発言と矛盾しないのかと問うたところ、ジャンピエール大統領報道官は『そうは思わない』と答えています。つまり、物理的な攻撃はしないものの、サイバー戦争なら直接攻撃も許されるということになります」(全国紙記者)

 さて、そのサイバー戦。ロシアは侵攻前後から行っていて、ウクライナの政府機関のHPなどがダウンした。だが、その後の成果については評価が分かれるところ。さらにその次の段階の情報戦や認知合戦では、明らかに西側諸国とウクライナが優勢だ。

 応報として、ロシアはGAFAが運営するSNSを国内で排除したものの、テレグラムなどを通じて情報は漏れていて、ロシアの統制は徹底されていない。さらに、既に昨年末の段階でロシアの侵攻の動きを察知していたアメリカは、適宜「ロシア軍の一部撤退」といったインテリジェンス情報を積極的に公開して、戦局で奏功している。

「ウクライナはサイバー攻撃を否定どころかサイバー義勇兵を世界から募るなど、むしろ積極的に行っています。今回の司令官の発言も、ウクライナのサイバー攻撃を後押ししているアメリカの情報戦に沿ったものと言えるでしょう。ですが過去のサミットで、サイバー空間でも国連憲章や国際法が適用可能であることが確認されているので、実際にやっていることは違法行為に当たる可能性があります」(同)

 それでも堂々とホワイトハウスも肯定しているのだから、結局、サイバー空間では既に大戦が勃発していて、こちらの泥沼化もしばらくは止む事はなさそうだ。

(猫間滋)

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