ロシア軍が子供を拉致か!?「パンをどうぞ」と強制連行された1万5千人の行方

 ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、両国政府代表団による4回目の停戦協議が29日、トルコのイスタンブールで開かれ、ロシアのメジンスキー大統領補佐官は、ウクライナ側から「中立化」に関する条約提案を受けたとし、持ち帰って検討する考えを示した。

 この協議を受け、米CNNテレビ(電子版)は、ウクライナの首都キエフ周辺からロシア軍の一部が撤退を始めたと報道。米側もロシア政府の「主要な」戦略転換だと分析していると伝えた。

 だが、そんな中、ロシア軍が多くの住民を連行したとされる南東部マリウポリ周辺では、移送された住民らの処遇をめぐり、不安の声が消えないという。

「ウクライナ外務省が『マリウポリ市民1万5000人がロシアへ強制連行される危機にある』との衝撃的な声明を発表したのは24日のことですが、同省によれば既に約6000人がウクライナ旅券を没収され、親露派武装集団が実効支配する東部ドネツク州にある選別収容所に送られているというのです。ロシア軍占領地区では住民への水や食料の配給が行われ、『パンをどうぞ』と誘ってバスに乗せているとも伝えられます。むろん、強制連行は国際人道法違反の重大犯罪で、第二次世界大戦時のナチス以来の暴挙。しかし、ロシアにはそれを冒してまでも、住民を強制連行する、なんらかの理由があるわけですからね。仮に停戦となっても素直に返すかどうかは疑問と言わざるを得ません」(軍事ジャーナリスト)

 ウクライナ側によると、選別収容所では、ロシア情報機関の要員らが住民を尋問し、携帯電話の交信内容などを確認。今後の処遇を決めている状態だというが、ロシア側が住民を連行する狙いは何なのか。

「考えられるのが、マリウポリから住民を追い出し、そこに親ロシア派の住民を住まわせて、そのまま町自体を乗っ取るというものです。旧ソ連時代は同様の方法で、町自体が乗っ取られたケースもあり、その可能性は高い。もう一つ考えられるのが、とくに子供については、兵士への育成です。というのも今回、強制連行に加担したのが、これまで内外で数々のテロ工作を行ってきたとされるチェチェン共和国首長のラムザン・カディロフと、彼の私兵である約2万人のカディロフツィだとされています。彼らは、ロシアによるウクライナ侵攻の際、ホストーメリ空港攻撃に参加しましたが、ウクライナ軍の反撃により殲滅され、司令官マゴメド・ツシャエフも戦死。多くの兵も失ったと伝えられます。カディロフとしては、失った私兵を補強しなければならないため、今回のマリウポリ市民の強制連行が、それを意図したものである可能性もなくはない。そうなれば、たとえウクライナが中立化しても、故郷の街に戻ってこられる可能性は限りなく小さいかもしれません」(同)

 さて、4回目の停戦協議を経て、両国はどこに向かうのか。今後のプーチンの出方に全世界の注目が集まっている。

(灯倫太郎)

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