東北楽天ゴールデンイーグルスの田中将大投手が東日本大震災から11年となった3月11日、「野球選手としては東北を背負って戦っている」と、被災地への思いを語った。
昨季は自身もチームも不甲斐ない成績に終わった。「皆さんといっしょに喜びたい」の言葉通り、前回9日の登板では4回無失点と頼もしいピッチングを見せている。
「今季の田中はキャンプから目の色が違いました。昨季の不本意な成績(4勝9敗)が本当に悔しかったんだと思います」(ベテラン記者)
田中は米球界に挑戦する前の13年、24勝負けなしと無双状態だった。被災地を勇気づけ、そしてチームには初の優勝、日本一を置き土産に渡米したわけだが、今季の復活でそのストーリーが再現されるかもしれない。
「鈴木誠也に続く日本人のネクスト・メジャーリーガーとしては、千賀滉大、菅野智之が思い浮かびますが、田中の名前も再浮上してきそうです」(球界関係者)
メジャーリーグは新・労使協定の話し合いがようやく終了し、締結翌日の3月11日(現地時間)に、米FA市場の目玉投手だったカルロス・ロドンが「2年総額4400万ドル」(約51億円)でSFジャイアンツと契約した。球団業務がストップするロックアウト状態が長期化したため、約300人が未所属となっており、「好投手は早い者勝ち」と言わんばかりの“スピード契約”だ。
そんな交渉再開と同時に争奪戦となった米FA市場において、田中の古巣・ヤンキースに関する投手事情も聞こえてきた。
「エースのゲリット・コールはともかく、先発投手陣は不安だらけ。マリナーズからFAになった菊池雄星と交渉するとの情報もありました。結局、菊池はブルージェイズと大型契約を勝ち取りましたが」(同)
コールに次ぐ2番手は、コーリー・クルーバーだろう。しかし、4月には36歳になる。ルイス・セベリーノはトミー・ジョン手術明けであり、ドミンゴ・ヘルマン、ジョーダン・モンゴリー、ジャーメソン・タイロンらの若手も伸び悩んでいる。そうなると20‐21年オフ、ヤンキース在籍7年間で78勝を上げた田中との残留契約が一向に進まない状況に、NYのファンが「なぜ?」「残すべき」と、首を傾げた経緯も思い出される。
田中は今でもNYのファンに愛されている。
「94年のストライキで低迷したメジャーリーグの人気を取り戻すのに貢献したのは、野茂英雄氏のトルネード旋風でした。今季も長期化した労使交渉の影響が懸念されており、このままヤンキースの先発投手陣の不振が重なれば、田中の復帰を望む声がもっと強くなりそうです」(同)
米スカウトも当然、日本球界を視察する度に田中の様子をチェックする。米球界復帰の可能性は低くはないと見るべきだろう。
(スポーツライター・飯山満)