世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「矢野阪神は守乱のまま開幕の危機」

 昨年のセ・リーグ盗塁王の阪神・中野が「下肢のコンディション不良」で開幕1軍が微妙な状況になってきた。「コンディション不良って何やねん」と関係者に聞くと、昨秋のキャンプから太腿の肉離れみたいなものを何度か繰り返しているらしい。春季キャンプは2軍で別メニュー調整のまま終了となった。正遊撃手として、2年目の飛躍を期待されていただけに、痛恨の出遅れとなりそうや。

 復帰に向けて順調に回復しているようやけど、肉離れは癖になるから気をつけなアカン。これまでも焦って復帰し、再発する選手を何人も見てきた。ランニングシューズでは全力ダッシュをできるようになっても、スパイクの歯でグラウンドをつかまえて走ると、すぐにブチッといってしまう。試合と練習では力の入り方が全く違う。最初はスパイクを履いて、球拾いなどでゆっくり歩くだけで十分。大事なのは体を徐々に慣らすことや。

 それにしても最近の選手は肉離れが多すぎる。DeNAの高卒3年目の正遊撃手候補・森も、2月27日の巨人とのオープン戦で、右太腿肉離れと左足首の捻挫で開幕が絶望的となった。僕は自慢でないけど、現役時代に一度も肉離れをしたことがない。何度か危ない時はあったけど、ちょっとヤバいなと思えば自分でブレーキをかけていたから。

 特に若い選手は練習でコーチに限界までしごかれることがあるから気をつけないといけない。言い方は悪いけど、うまく手を抜くことを覚える必要がある。1から10まで真面目に全力で取り組んでいたらパンクしてしまう。もちろん、トコトン自分を追い込まないといけない時もあるが、流してもいい時は適当にやるのも技術のひとつなんやから。

 プロ野球の世界は3年続けて結果を残して、本物のレギュラーと言える。中野はまだ1年。故障で不在の間に他の選手がポジションをつかんでしまえば、冷や飯を食うことになる。だが中野にとっては幸いなことに、代わりに定位置を奪うような勢いのある選手がいない。木浪は打撃はいいけど、守備でポカをするイメージがある。高卒4年目の小幡は走攻守のそろったタイプやけど、アピールが物足りない。ガッツを前面に出す選手でなくても、ポジションを奪う時には自然とギラギラしたものが出てくるもんなんやけど。

 阪神はただでさえチーム失策数が4年連続で12球団最多。このまま正遊撃手不在のまま開幕すれば、守備面での不安が大きすぎる。守備は練習すれば必ずうまくなるから、どこかに原因があるはず。どこまで地道にコツコツやれるか。そこは選手だけでなく、コーチにも責任はある。僕も外野守備は下手くそやったけど、上達したのは熱心なコーチのおかげ。1試合で投手が130球投げるとすると、1球ごとに目で反応してスタートを切らされた。1球でもサボるとベンチに帰ってコツンと叩かれた。

 日本ハムの新庄監督が、外野手は捕球したら2アウトであろうと、すぐに内野に返球するように教えていた。ほんまにその通り。守備がうまくなるには、反復練習と癖づけが絶対必要。何も考えなくても自然と動くようになるまで、体で覚えないといけない。

 今季限りで退任を発表した矢野監督が花道を飾るには、記録に表れないものも含めて、エラーをどこまで減らせるかに尽きる。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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