開幕からまる2カ月、セ・リーグの順位変動が激しさを増している。各チームが連勝しては連敗に突入する泣き笑いを繰り返し、まさにジェットコースターのようだ。ドラマチックなシーズンは、ベンチ裏でも数々の悲喜劇を生んでいる‥‥。
気づいたら首位を快走し始めた広島だが、開幕当初のチームは投打ともに絶不調だった。はやばやと2度も4連敗を喫するなど、多くのメディアが「V逸100%」とまで断じていた。ところが5月の「鯉の季節」が始まると完全に息を吹き返し、5月25日の巨人戦では3年ぶりの11連勝を達成。最大借金8から怒濤のV字回復を成し遂げた。きっかけは4月17日、熊本での巨人戦だったという。
1点を追う9回二死から菊池涼介(29)、そして石原慶幸(39)が適時打を浴びせて試合をひっくり返し、5-4でミラクル勝利。まさにチーム一丸となってつかんだ白星の裏側には、8回の巨人の攻撃でかつての同僚・丸佳浩(30)が放った勝ち越し2ランが背景にあった。
とある球界関係者は、主力選手からこう打ち明けられたという。
「もしもあの試合でうちが負けてしまったら、あの人(丸)がヒーローになっていた。自分たちの目の前でそれだけは絶対にさせたくないと、みんなが死ぬ気で猛奮起したんです。うちを裏切って出ていった人に自分たちが踏み台にされるなんて、それ以上の屈辱はないですからね」
再三の引き止め要請にも首を縦に振らず、FA権行使でカープから巨人へ移籍した丸に「いい格好だけはさせまい」と一致団結。その結果、丸不在でも自分たちは戦力的に何も問題がないという自信を深めたことにより、「チームの雰囲気が明らかにガラリと変わった」というのだ。
この試合を皮切りにチームは4月27日のヤクルト戦まで8連勝を果たし、それまでの沈滞ムードを完全に吹き飛ばしたのである。
もちろん、それだけではない。開幕スタート時にはギクシャクしていた緒方孝市監督(50)と佐々岡真司投手コーチ(51)の関係が修復し、今や「蜜月」と言われるほど良好な間柄へと好転していたのだ。これには間を取り持った立役者がいたというが、
「佐々岡コーチは松田元オーナー(68)の推薦で今季から1軍へ入閣した次期監督候補。そのため緒方監督は『俺に引導を渡しに来た死神』とグチり、キャンプ中から距離を置いていた。佐々岡コーチが2軍から1軍に上がってきたことで、自分の腹心だった畝龍実投手コーチ(54)がブルペンへと追いやられてしまった。そんな2人を見て当の畝コーチが『これじゃあ、まずい』と間に入り、4月の中旬頃から和解の酒席を何度か設けたらしい。これが功を奏したのか、今では緒方監督が『ササはナイスガイ』と評し、佐々岡コーチも何かと『監督とは一蓮托生ですから』と口にするようになっている」(球団関係者)
雨降って地固まるとはこのことか。いずれにせよ、カープの底力はやはり脅威だ。