岡田晴恵氏 国際学会では「地震には敏感だけど感染症には不感症」と言われる/テリー伊藤対談(2)

テリー 本によると、岡田さんが最初に新型コロナについて知ったのは2019年の12月24日なんですね。

岡田 その前から噂は聞いていたんですけど、感染研時代の元上司だった人から「武漢で重症の肺炎患者が発生している。すでに複数の感染患者を確認」というメールが来たのはその日ですね。その時はまだ何のウイルスなのか、詳細はわかりませんでしたけど。

テリー そうすると、岡田さんみたいな専門家はずいぶん早くから危機感を持っていたわけですよね。僕なんか(2020年の)2月にダイヤモンド・プリンセス号が話題になった時も、ワイドショーの出演者なんかと「これ、中で何やってるんだろう」「何日もショーを見られるのかな」なんて、まだノンキなことを言ってたんですよ。

岡田 クルーズ船の感染者数と死亡率を見ると、大変な状況だったんですけどね。

テリー 本の中にも書かれてますけど、なんで日本の対応は遅れたんですか。

岡田 例えば国際学会とかに出ると、みんなに「日本人は地震には敏感だけど、感染症には不感症」って言われるんです。日本は島国ですし、大陸じゃないからペストが大流行した時も日本は逃れてますよね。だから、激烈な急性感染症の大流行の経験ってあんまりないんですよ。天然痘やはしかはありましたけど。

テリー スペイン風邪は第一次世界大戦の頃ですよね。

岡田 そうです。で、そのあとコロナで言えば、「SARS」と「MERS」があって、中国や韓国、台湾などは大変なことになりましたけど、幸いにも日本には入らなかった。そういう「周辺国は大変だったけど日本は大丈夫だった」というラッキーが「今回も大丈夫じゃないか」というリスク評価の甘さにつながったんだと思います。

テリー 岡田さん以外にも専門家の方はたくさんいますよね。どうして専門家同士で危機意識の持ち方に大きな差が出るんですか。だって、1月の時点で岡部さんは「まだそれほどでもないんじゃないか」みたいなことを言ってますよね。

岡田 だから私は「そんなこと言わないでください」と言ってました。だって武漢はロックダウンしなきゃいけないほどの感染者が出てるのに、日本人は大丈夫だって根拠がどこにありますか。2月21日になっても日本感染症学会の舘田(一博)理事長が「1週間ぐらいで治ります」みたいなメッセージを「国民の皆さんへ」ってホームページで出してるんですよね。でも、そんな証拠はどこにもないんですよ。そうすると日本が武漢みたいになる可能性もあるわけです。だったら最悪の場合も考えて、すぐに準備しましょうよ、と。感染症は広がってからだと手が付けられなくなるので、その前に抑えましょうということです。

テリー 今なら僕らもわかるんですけどね。

岡田 ということを、私は当たり前だと思ってるんですけど、ひと回り以上も年上の大先輩が「大丈夫だ、大丈夫だ」って言うので、これは参ったなと。

テリー その時、岡田さんは「大丈夫なはずないですよ」って声を上げるわけじゃないですか。そうすると先輩方に煙たがられたんですか。

岡田 煙たがられるというか、「黙れ」という感じですよね。

テリー なんで?

岡田 先生方は政府の委員ですから、いろいろな肩書を持ってるんですよ。でも、私はただの大学教授ですから、しがらみがないんです。そういう立場の違いがあるのかもしれないですね。

*テリー伊藤対談(3)へつづく

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