C 政府は空港などでの水際対策の強化に血道を上げていますが、濃厚接触者を市中に放ってしまってから慌てて隔離するなど、その内実は穴だらけとしか言いようのないオソマツなものです。したがって、市中感染は昨年暮れにはすでに始まっていたと考えるのが妥当。場合によっては、第6波のピークは第5波の数倍に達する懸念すらあります。
B 専門的なことを言えば、オミクロン株はヒトのACE2受容体に結合するスパイクタンパク質に数多くの変異があります。そのため、アルファ株やデルタ株などの従来株のスパイクタンパク質に結合する中和抗体を誘導してウイルスがACE2受容体から侵入しにくくなるよう設計されているワクチンの有効性は、スパイクタンパク質に数多くの変異を有するオミクロン株に対しては限定的とならざるを得ないのです。
─要するに、免疫をすり抜けてしまうということですか。
B その通りですが、オミクロン株が持つ猛烈な感染力の理由は、中和抗体による免疫をすり抜けてしまうからだけではありません。オミクロン株はACE2受容体に結合するスパイクタンパク質の数も種類も多いため、感染はワクチンを接種している人にも接種していない人にも、凄まじいスピードで拡大していきます。そして先に述べたように、オミクロン株もまた、南アフリカにおける免疫不全患者の体内で誕生したものと考えられています。
─しかし、毒性は弱そうだとされていますが。
A オミクロン株の場合、ウイルスの外表面に発現しているスパイクタンパク質以外の内部遺伝子の変異と毒性との関係がよくわかっていません。今のところ重症化するケースは少ないとの臨床報告が上がっていますが、ワクチン接種の有無、感染者の年齢など、精査されていない不明部分も多く、現時点で楽観視することは極めて危険です。
B ワクチンについて言えば、中和抗体を誘導する液性免疫の効果のほか、キラーT細胞を誘導する細胞性免疫の効果があります。後者の細胞性免疫は、変異によって少し顔つきを変えたウイルスに対しても一定程度、ウイルスを殺傷するキラーT細胞を誘導することができます。そのため細胞性免疫はオミクロン株に対しても一定の効果を示す可能性がありますが、だから3回目の接種を受ければ液性免疫と細胞性免疫が上昇するので安心、と考えるのは早計かつ危険です。
A=ウイルス学の専門家/B=感染症の専門医/C=公衆衛生学の専門家/D=政府関係者
(4)につづく