緒方カープ急上昇の陰に「長野の処遇」

 広島東洋カープが”指定席”の首位に帰ってきた。開幕から5カード連続で負け越した際には「優勝の可能性、ゼロ!」の壊滅的状況だったが、5月は19勝4敗1分けと一気に上昇機運を掴んだ(30日現在)。

「球団記録にあと一歩と迫る11連勝、レグナルトも16試合連続無失点と奮闘しました。選手個々の調子も上がってきましたね」(スポーツ紙記者)

 チームを立て直すことができたのは、緒方孝市監督の「ある決断」によるものだった。長野久義の処遇である。前出の記者によれば「緒方監督は長野の調子が上がってくるのを待っていられなかった」という。

 緒方監督は、守備位置を確定させたいと思っていた。だが、レフトのレギュラーを予定していた長野の打撃だが、ベテランにありがちなスロースターター。本調子になるまでちょっと時間を要するタイプだ。それ以上に緒方監督を悩ませたのが、長野が“レフトを守れない”ことだ。長野はゴールデングラブ賞に3度も選ばれた好守の外野手だが、レフトだけは苦手ときている。

「広島への移籍が決まった時点から、長野のレフトの守備問題は指摘されていました。広島サイドは『修正できる』と見ていたんですが」(球界関係者)

 緒方監督が決めたのは「レフト西川、一塁バティスタ」の新布陣だった。また、主砲・鈴木誠也の後を打つ5番バッターが打線の最重要ポイントとし、そこに西川龍馬を抜てきした。生え抜きの西川が奮闘し、チームも活気づいていったのだ。

「ベンチスタートが多くなった長野も焦りがあるのか、スタメン出場の機会をもらうと結果を出そうと必死です」(前出・スポーツ紙記者)

 しかし、こんな声も聞かれた。

「3月31日の対巨人戦で長野がレフトで捕球ミスをし、勝ち越しを許してしまいました(記録上は安打)。5月26日の巨人戦では、長野は同点タイムリーを放ちました。試合はどちらも広島の負け。ヒット、ミスどちらにしても、長野が目立つとなぜか巨人に風が吹くような…」(前出・球界関係者)

 単なる偶然かもしれないが、緒方監督が長野ではなく、西川を正左翼手に選んだのは、“古巣との相性”を察したからかもしれない。

(スポーツライター・飯山満)

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