日本大学は、本当に田中英寿・前理事長との関係を断ち切ることができるのか? ちょっと心配になってきた。
日本大学が会見を開き、加藤直人学長が田中英寿前理事長との絶縁を宣言したのは、12月10日だった。「永久に決別する」と言い切った加藤学長に、同大学に批判的だった識者、関係者もエールを送っていたが、新たな“汚点”が見つかった。
「東京・板橋区の附属病院の建て替え工事を巡る背任疑惑が事の発端です。その容疑で逮捕された井ノ口忠男被告は、2018年のアメフト事件の際、理事を解任されましたが、いつの間にか、株式会社日本大学事業部のトップ、そして理事職にも復帰してしまいました。田中前理事長による人事です。日大の再生には、田中容疑者と本当に決別できるのかどうかが重要になってきます」(社会部記者)
その「脱・田中」の体制作りの先頭に立つのが、加藤学長である。
しかし、その加藤学長と田中前理事の関係性も精査しなければならないようだ。
昨年12月、佐野日本大学短期大学学長で、作家の佐藤三武朗氏が「炎の男 田中英壽の相撲道」(幻冬舎)なる著書を発表している。田中前理事長の半世紀を小説化したものだが、そのオビに推薦文を寄せていたのが加藤学長なのだ。それも、写真付きで。
〈学祖山田顕義の志を継ぐ、「和」と「義」の生き方〉
山田顕義氏とは初代司法大臣で、日本大学の創立者でもある。
去年のちょうど今頃、加藤学長は、日本大学を創立した山田顕義氏に田中前理事長を重ねて見ていたことになるが…。
しかも、同著書の第一節は「日本大学創設130周年記念祝賀会」のことがまとめられていた。
〈和と義を重んじ、仲間を大事にした生き様から、苦難に満ちた人生を生き抜くための知恵と根性が明らかに。〉
そんな紹介文も見られた。苦難に満ちた人生は田中前理事長ではなく、残された大学経営陣のほうだろう。
ひょっとしたら、加藤学長も田中一派なのでは? いや、かつての仲間が反旗を翻したからこそ、日大再生の決意はホンモノとも解釈できるが、田中前理事長のヨイショ本が発売された1年後、こんな事態になろうとは思ってもみなかったはず。加藤学長は田中前理事長との関係性を含めて、もう一度、説明会見を開いたほうが良さそうだ。
(スポーツライター・飯山満)