テリー 日本のプロ野球に目を移すと、やっぱりヤクルトの快進撃は驚きましたね。シーズン前はどの解説者の方もみんな下位予想で。
槙原 僕も6位予想でしたからね(苦笑)。言い訳になりますが、途中で獲った2人の外国人選手(ドミンゴ・サンタナ、ホセ・オスナ)が試合にずっと出場して機能したんですよ。これは僕ら読めないですから。
テリー そうか、外国人ね。
槙原 もともとヤクルトには村上宗隆や山田哲人といういいバッターがいて、1番に塩見泰隆が定着したんです。そこに外国人選手がハマれば、優勝する力はあったんですよね。
テリー やっぱりCSはヤクルトですか。
槙原 心情からすると、そのまま(日本シリーズに)行かせてあげたいですけどね。下馬評を覆しての6年ぶりのCS進出ですから勢いもありますし、下手に3位のチームが勝ったりして、変な遺恨を残すよりいいですよ。
テリー 僕は巨人ファンなんで、やっぱり最後の大失速が悔しいんですけど。今季、原監督には疑問符がつくいくつかの采配がありましたよね。
槙原 うーん。ただ、勇気を持って投手を代えてましたし、シーズン前には桑田(真澄)をコーチに招聘して化学反応を狙ったり、悪くなかったと思うんですけどね。でも、意外に投手ばかり代えて、「桑田や宮本(和知)は止めないのか」とは思いましたけどね。
テリー なんで止めないんですか。
槙原 いや、止められないんじゃないんですか。やっぱり最終的な決断は監督ですから。でも、どんな采配も優勝すれば「名采配だ」って言われるわけで、僕らみたいな内情を知らない外野がヤイヤイ言ってもしょうがないんですけどね。
テリー だって槙原さんは解説者じゃないですか。
槙原 そうなんですけど、コロナで球場に行けなかったんですよ。
テリー あ、そうか。
槙原 もちろん、コロナになる前はできたんですよ。練習中のグラウンドに下りて行って、例えば桑田や宮本にオフレコで話を聞いて「原監督はこういう采配をしてますけど、実はこういう事情があるんです」とかって、そのままは明かせませんけど、オブラートに包みながら話せたんです。でも、今はグラウンドにも入れないから、ヒソヒソ話ができないんですよ。だから、采配については一概に言えないんですよね。
テリー 途中で暴行事件を起こした中田翔が無償トレードで入ってきましたよね。それがチームに不協和音を起こし、低迷の原因になったっていう記事も読んだんですけど。
槙原 あぁ。あの件については僕もやり方を間違えたかなと思ってますね。獲得するのはいいんですけど、謹慎処分を受けた身ですし、日ハムでも打ててなかったわけですから、やっぱり2軍で鍛え直してから、1軍に上げるべきだったんですよ。そうすればカンフル剤になった可能性もあったと思うんですが。すぐ使っちゃったのはチームと本人、双方にとって、よくなかったですね。それをいろいろと叩かれて、巨人が大事なところで踏ん張れなかったひとつの要因になったかもしれないですね。
テリー まぁ、いずれにせよ、今季はパ・リーグも最後まで優勝争いがもつれましたし、これからCS、日本シリーズとまだまだ楽しめますね。
槙原 いい試合を見たいですね。
槙原寛己(まきはら・ひろみ)1963年、愛知県生まれ。愛知県立大府高校卒業後、ドラフト1位で読売ジャイアンツへ入団。初登板で初完封、その年に12勝を挙げ、当時の日本最速である155キロを記録するなど、藤田・王・長嶋監督のもとで、巨人黄金時代を支える投手として活躍した。94年、対広島戦で20世紀最後の完全試合も達成。98年、シーズン途中からリリーフへ転向し、01年に現役を引退。現在は野球解説者として、プロ野球、メジャーリーグなどの解説で活躍中。
*「週刊アサヒ芸能」11月4日号より