槙原寛己「二刀流はやれて30歳まで。あと2、3年で決断の時が来る」

テリー 大谷は大活躍しましたけど、チーム(ロサンゼルス・エンゼルス)は全然ダメだったじゃないですか。来季、大谷はどこか別のチームに行くんですか。

槙原 試合後の記者会見で「もっと勝てるチームでやりたい」みたいなことを言ってましたよね。やっぱりプロ野球選手である以上、優勝したいって気持ちは絶対にあるんですよ。10月にドキドキしたいし、しびれたいんです。

テリー そりゃあ、そうだよね。

槙原 どんなに好投しても勝てないとか、フォアボールで歩かされてばっかりが続くと、どうしたって勝ちに飢えてきますし。個人的にはヤンキースの大谷も見てみたいですけどね。

テリー いいですね。

槙原 ただ、例えばアメリカン・リーグの東海岸のチームに行ったとしても、寒いから今季みたいなパフォーマンスが出せるかどうか。気候の違いは不安ですよね。

テリー 24時間、野球のことしか考えてないって言われてる男ですから、自分でもよくわかってるでしょうね。

槙原 またエンゼルスも補強はするでしょうし、本来3番とか4番を打ってたトラウト選手がケガから復帰してくれば、チーム状況も変わりますからね。

テリー そうすると残留。

槙原 おそらく大谷にはエンゼルスが破格の契約条件を出すと思うんですよ。もしコロナがうまく終息すれば、ディズニーランドとセットのロサンゼルス旅行なんて目玉になりますからね。スタジアムでエンゼルス戦を見て、ディズニーランドに寄って、ちょっと足を伸ばせばサンディエゴ(・パドレス)でダルビッシュも見られますから、あのへんはほんとにいいんですよ。

テリー 槙原さんは毎年メジャーの取材でアメリカに行ってるから。

槙原 戦力としてはもちろんですけど、大谷にはそういう価値もありますよね。

テリー 今季みたいに来季も二刀流で活躍できますか。

槙原 僕は、やれて30歳までだと思いますけどね。今、27ですから、あと2、3年で決断の時が来ますね。

テリー なんでですか?

槙原 引き金になるのは、ケガじゃないですか。今みたいな出方を続けてたら疲労が蓄積して、大きなケガをしてしまうと思うんです。今年は「二刀流なんてムリだ」と言われ続けたことに対して「絶対に見返してやる」という強い気持ちもあって、それを支えに頑張れたと思うんですが、2、3年でどちらかに専念することになるでしょうね。

テリー ということは、長く続けられるのはバッターですよね。

槙原 バッターですね。

テリー 僕、すごく不思議なんですけど、彼はあんなに甘いマスクで、全米も注目する大スターじゃないですか。それなのに浮いた話が全然ないですよね。日本だったら、普通は先輩に連れられて銀座に飲みに行くとかさ。

槙原 日本にいた時から「いや、実は裏で」みたいな話は全然聞かないですから、ほんとに野球が好きなんでしょうね。今は向こうにいることによって、日本のマスコミに追い回されなくて済むから、野球に集中できる。彼にとってはすごくいい環境なんじゃないですか。

テリー コロナもあってマスコミも追えないしね。

槙原 だから家に帰ってゲームやってるのか、何してるのかわからないですけど、それが苦じゃないんでしょうね。それも彼の素質だと思います。

槙原寛己(まきはら・ひろみ)1963年、愛知県生まれ。愛知県立大府高校卒業後、ドラフト1位で読売ジャイアンツへ入団。初登板で初完封、その年に12勝を挙げ、当時の日本最速である155キロを記録するなど、藤田・王・長嶋監督のもとで、巨人黄金時代を支える投手として活躍した。94年、対広島戦で20世紀最後の完全試合も達成。98年、シーズン途中からリリーフへ転向し、01年に現役を引退。現在は野球解説者として、プロ野球、メジャーリーグなどの解説で活躍中。

*「週刊アサヒ芸能」11月4日号より

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