パイレーツの筒香嘉智選手が8月26日(日本時間27日)のカージナルス戦でも代打アーチを放ち、移籍後の好調さをキープしている。試合を決定づける4号2ランについて、地元メディアが質問すると、パイレーツのデレク・シェルトン監督は「彼は日本で多くの実績を残し、かつ成功をおさめているベテランだ。自分のことを熟知し、どう準備をするべきかを分かっている」と答えていた。しかし、筒香はシェルトン監督でなければ復活できなかったかもしれない。
「ソーシャル・ディスタンスの監督と呼ばれています」(在米ライター)
昨年7月26日。シェルトン監督は球審に抗議しようとし、ベンチを飛び出した。マスクも捨て、何かをまくし立てたが、近づこうとする球審に両手を前に出し、「この距離で話をしよう」のポーズを見せた。
怒っていても、理性を失っていない。その行動には、抗議された審判や相手チームも吹き出していたそうだ。
「昨季の勝率は両リーグで最低。今季もナ・リーグ中部地区の最下位に沈んでいます。かなりの確率でシーズン100敗に到達しそうです」(同前)
しかし、“ソーシャル・ディスタンス”の姿勢は抗議のときだけではなかった。
「筒香を獲得したいと進言したのは、パイレーツのスカウトたちでした。マイナーで復調しつつあったことを説明すると、シェルトン監督は快諾しました。チームスタッフを信頼し、職域をおかすようなことはしません」(現地関係者)
8月の筒香のマイナーでの成績だが、打率3割7分8厘、本塁打2。レイズから移籍したあと、ドジャースは筒香の打撃修正に着手しており、その効果が出始めていたのだ。しかし、ドジャースは優勝を狙っており、筒香にもう一度チャンスを与える余裕がなかった。
そんな筒香の立場を見抜いたのは、パイレーツのスカウトたちのお手柄だが、フツーの監督なら「もっと有名選手を、実績のある選手を獲ってくれ」と反発しただろう。
「現役時代はキャッチャーで、ヤンキースの1Aで2季しかプレーしていません。でも、当時のチームメイトには後にヤンキースの看板選手となるデレク・ジーターもいました。一流になる選手の成長過程を身近で見ていますし、選手のプライドにも配慮してくれる監督です」(同前)
こう言っては何だが、筒香の周りには密着するメディアもいなくなった。日米双方のメディアに追い掛けられなくなったのも、プラスになったようだ。こちらも“ソーシャル・ディスタンス”の効用だろう。
(スポーツライター・飯山満)