地味な五輪開閉会式、文春が明かした”幻の演出”に「これが見たかった」大合唱

 8月8日に行われた五輪の閉会式のNHK中継は、世帯平均視聴率46.7%という予想外に良い数字だった。なにしろ夏季大会では1972年のミュンヘン大会の46.9%に次ぐ数字で、前回16年のリオデジャネイロではわずか7.5%しかなかったからだ。もちろんホスト国で時差がないこと、日本人選手が躍進したこと、コロナ禍での五輪開催で最後はどう締めくくるか見届けたい……様々な理由がそこにはあったのだろう。

 一方、では中身はどうだったかと言えば、SNSでは「つまらない」と不評で、「つまらない」が急上昇ワードになったほどだ。事実、式の時間が経つにつれて参加選手が寝そべったり会場を出ていく姿が多数目撃され、現場もそうとう退屈だったことは明らかだ。

 そして翌9日に行われた武藤敏郎・組織委員会事務総長の会見でもこのことを記者に問われ、開幕前のゴタゴタから演出家を変えざるを得ないなどしていったん大きく変えられたコンセプトを擁護する発言があった。

「おそらく武藤さんの頭の中には『週刊文春』報道がよほど引っかかっていたのでしょう」

 というのは週刊誌記者。文春ともども足並みの揃わない開催側の内部を見てきた実感から出た感想だ。

 その文春では「幻の“MIKIKOチーム版”五輪開会式を完全再現!」という記事で、「渡辺直美=オリンピッグ」案が批判に晒されて演出責任者を更迭されたCMクリエイターの佐々木宏氏の前任だった振付演出家のMIKIKO氏の演出プランを、独自入手した台本などから再現。そこでは、カウントダウンが始まると大友克洋の伝説的アニメ『AKIRA』の主人公が乗る赤いバイクが国立競技場に現れて走り回る。カウントダウンがゼロになると、会場中央のドームからPerfumeが姿を現し、彼女らをプロデュースしてきた中田ヤスタカの音楽が流れ出す。するとステージの周囲には東京の街々が映し出され……といった、出だしからしてもうワクワクするような演出が予定されていたという。

 記事を読んだ人からは、「今更だけどこれが見たかったな」「涙出た。なんでこれが実現しなかったんだ」などと、SNSでは賞賛の声が多数上がっていた。だからこそ武藤氏が、「昔のコンセプトと比較していろいろおっしゃる方もいらっしゃるが、エネルギー爆発型のお祭りもいれないようにした。おのずと地味なものになる」と言い訳めいた発言をせざるを得なかったというのだ。

 文春に続いてネットでは“幻の演出動画”もアップされて話題になっている。

「動画は7月19日に撮影されたもので、映っている建物から察すると、国立競技場がある神宮外苑から少し離れた場所から演出のリハーサルを行っている模様を斜めの角度から撮影したものです。そこには、ビルの上空に無数のドローンが打ち上げ花火のように鮮やかな光を発して舞い上がって、時には地球やハートの形になったり、『THANK YOU』『♯Tokyo2020』といった文字を象る様子が収められています。開幕式でも話題になったドローンを用いた演出で、これが実現していれば大会のラストでもその鮮やかさと日本の技術力の高さを世界に誇るものになったはずです」(前出・記者)

 武藤氏は「開閉会式ともどもコロナによってコンセプトを大きく変えた」と全てはコロナのせいとしているが、様々なトラブルで人災で演出を大きく変えざるを得なかったのは周知の事実。それでもそのことに言及することはなかったようだ。

(猫間滋)

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