16日に引退会見を行った男子体操のリオ五輪団体金メダリストの白井健三。自身の名を冠した技が6つもある跳馬とゆかのスペシャリストだったが近年は度重なるケガに悩まされ、東京五輪代表の座も逃した。ただ、それ以上に国際体操連盟がリオ五輪後に示した新たな採点方針に苦しんだと言われている。
「これは演技中や着地の姿勢を厳しくジャッジするというもので、難易度の高い技を成功させても細かい部分で容赦なく減点されるようになりました。基本重視といえばそれまでですが、もともと彼は最高難度の技に挑む演技スタイル。採点方針が従来のままだったら引退もなかっただろうし、それこそ東京五輪で金メダルを獲っていたかもしれません」(体操関係者)
どの競技でもこうした細かいルール変更は頻繁に行われているが、とりわけ選手への影響が大きいのが採点競技。98年長野五輪のスキージャンプ・ラージヒルの個人・団体で2つの金メダルを獲得した船木和喜もそのひとりだ。
90年代後半の世界最強ジャンパーの一角として一時代を築いたが、長野五輪後にスキー板の長さの上限が《身長プラス最大80センチ》から《身長の146%》に変更(※現在は145%)。日本ジャンプ陣はこれに対応できず、船木もW杯通算15勝というキャリアのうち、00年以降はわずか1勝と低迷している。
また、フィギュアスケートも2年に一度のペースでルールが見直され、回転不足やスケートのエッジの使い方に対する減点幅や基準などが細かく変化している。「浅田真央もキャリア中盤以降に苦しむ一因となっていた」と指摘するのはスポーツジャーナリスト。
「どのスポーツでもルール改正で日本人選手の成績が伸び悩むと『活躍させないための陰謀だ!』などの批判の声が上がりますが、外国人選手でも新ルールで飛躍した者もいれば、それができなかった者もいる。そこに対応するのも含めて競技のうちなんです」(同)
一理あるとはいえ、ルール改正によって天国から地獄に突き落とされるアスリートが多いのも事実。それほどまでに選手の競技人生を左右するルールの変更に問題がありそうな気もするが……。