「関与せず」から一転、二階氏「1.5億円支出責任」発言修正の狙いとは?

 政局がらみの責任のなすりつけあいか、はたまた、問題を曖昧にしたまま幕引きを図る魂胆なのか……。

 19年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で有罪が確定し、当選無効となった河井案里氏の陣営に党本部が提供した1億5千万円について、17日の会見で「私は関与していない」と明言した自民の二階俊博幹事長。

 ところが、1週間後の24日の会見では前言を翻し、責任は「総裁(安倍晋三前首相)と幹事長(二階氏)にある」と述べたことで、永田町ではさまざまな憶測が飛び交うことに。

 全国紙政治部記者が語る。

「17日の会見では関与を否定した二階氏に次いで、同席した腹心の林幹雄幹事長代理が、『当時の(甘利明元経済再生相)選対委員長が広島を担当していた』と補足したんですが、これに対し、名指しされた甘利氏は怒り心頭。翌18日には記者団に対し『私は1ミクロンもかかわっていない。事件後の新聞報道を見て初めて知った』と完全否定しました。甘利氏は麻生派の重鎮。当然のことながら、麻生派としては黙っているわけにはいかない。もともと党内では麻生太郎財務大臣と、その盟友である安倍晋三前首相、それに二階氏の3人が、菅首相を挟んで緊張関係にあることは周知の事実。そんなこともあって、永田町では、二階氏に責任を押し付けて幹事長から引きずり降ろそうという動きが起こったのでは、と噂がまことしやかに囁かれているんです」

 ところが、そこは「魑魅魍魎」の永田町を長年生き抜いてきた二階氏だ。早い段階で「二階降ろし」の情報をキャッチしたようだ。

「そこで、『責任は「総裁(安倍晋三前首相)と自分にある』と煙幕を張ることで、『全責任を俺に押し付けるのであれば、こちらにもそれ相応の考えがありますよ!』と、逆に安倍・麻生タッグにプレッシャーをかけたのでは、と噂されています」(前出の記者)

 買収事件で逮捕された河合克行被告が安倍、菅両氏と極めて近かったことは知られるところだが、案里氏は当選後、二階派に入会している。

「当時は官房長官でしたが、菅氏も案里氏の選挙応援に駆け付けるなど、肩入れしていたことは事実で、案里氏の二階派入りは菅マターだったとされています。そんなことから、この問題はなんとか二階氏に処理してほしいという気持ちが強い。ところが、甘利氏の名前を持ち出したことで、天敵である麻生派を刺激してしまった。支持率低下が止まらない菅氏としては、頭痛の種が増えてしまったというところでしょうね」(前出の記者)

 そんな中、克行被告の公判が18日に結審。検察側の求刑は懲役4年、追徴金150万円だが、弁護側は執行猶予付きの判決を求めている。

「本人も起訴内容の大半を認め謝罪し、議員辞職していることで、執行が猶予される可能性もある。そうなれば、控訴しない可能性も大きいですし、その場合、捜査当局が自民党本部から押収した資金支出に関する書類も早期に返還されることになりますからね。さすがに『捜査当局から関係書類が戻っていないので、説明できない』という言い訳は通らなくなる。二階氏の腹心である林氏は、『(書類が)返って来たらどれだけの広報活動に使ったのかというのが実証できる。買収資金には使われていないということはきちっと証明する』と豪語していますが、果たしてどうなることやら。ともあれ、コロナ対策に加え、オリンピック開催と、問題山積の中での相も変わらぬパワーゲームには、もうウンザリという言葉しかありませんよ」(前出の記者)

 河合氏への判決言い渡しは6月18日。くしくも、この日は昨年、夫妻が逮捕された日と同じになる。

(灯倫太郎)

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