日本はすでに五輪を2度開催中止していた!

 開催まで2ヶ月を切った東京五輪。国内外で中止を求める声が多く、朝日新聞が5月15~16日に行った世論調査によると、「中止」と「再延期」と答えた人の割合は83%。国民の大多数がこの夏の五輪開催を見送るべきと東京五輪にNOを突きつけている。

 仮に中止となれば異例のことだが、前例がないわけではない。1896年のアテネ五輪以降、近代五輪は夏季34回、冬季25回の計59回の開催が予定されていたが、意外にもこれまで5大会が開催中止となっている。

 夏季は1916年のベルリン五輪と1944年のロンドン五輪、冬季は1944年のコルチナ・ダンペッツオ五輪(イタリア)だ。そして、中止となった残りの2大会は1940年の東京五輪と札幌冬季五輪。実は、日本はすでに二度、五輪が中止となっていたのだ。

 過去に中止された五輪は、いずれも第一次、第二次世界大戦の影響によるもので、日本も日中戦争の悪化を理由に閣議決定で開催権を返上している。なお44年、東京五輪はフィンランドのヘルシンキでの代替開催が一度は決定したが、戦争が激化したことでこちらも最終的には中止を余儀なくされている。

「当時は今ほど交通手段が発達しておらず、世界大戦が起きている中で開催国への移動の安全の保障もなければ、五輪期間中に情勢悪化で戦乱に巻き込まれる危険もありました。中止は当然の判断ですが当時はテレビ放送もなく、莫大な放映権料が発生する現在の商業化された五輪とは別物。中止しても莫大な違約金や賠償金も負担せずに済んだんです」

 そう語るのは、五輪事情に詳しいスポーツジャーナリスト。戦争というやむを得ない理由があったとはいえ、現在よりもはるかに中止にしやすい状況だったようだ。

「今は放映権料の問題だけでなく、多くのスポンサー企業が参加しており、ケタ外れのお金が動きます。それによって世界的スポーツイベントとして成功できた反面、コロナ禍のような世界的惨状ですら中止できません。これは今後の五輪の在り方を考えるうえでの大きな課題です」(前出・ジャーナリスト)

 予定通り開催するのか、それとも三度目の五輪中止となるのか。今後の状況をじっくり見守りたい。

*写真は当時の朝日新聞号外

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