「台湾の至宝」を目覚めさせた日ハム・中田翔と祖国のテレビ視聴者

「台湾の至宝」とも称された王柏融が、ついに“覚醒”した。5月12日のオリックス戦では5番DHで出場し、先制弾と決勝点に絡む右中間二塁打を放つなど大活躍だった。

「今年は開幕戦を二軍で迎えました。その屈辱をバネに一軍昇格後はスタメン出場した7試合中、5試合でマルチ安打をマークしています」(スポーツ紙記者)

 台湾球界で2年連続打率4割をマークした打撃センスがついに覚醒したわけだが、開幕二軍の屈辱だけが理由ではないようだ。

「基本的に性格はマジメ。新型コロナウイルスの影響で手続きが遅れると分かれば、来日を前倒したり。台湾の古巣・ラミゴの元同僚たちと自主トレもしていました」(同前)

 また、台湾時代を知る関係者によれば、「大王」なるニックネームも頂戴しているが、人見知りで、環境の変化に適応するにも時間が掛かるタイプだという。

「昨年、中田翔が食事に誘い、オフも自宅に招いていたそうです」(球界関係者)

 日本ハムには「中田会」なる会合があるそうだ。

 自身の打撃スタイルも見失っていた。台湾時代から日本球界に興味を持っていたそうだが、来日後、もっとも影響を受け、目標とした選手はソフトバンクの柳田と阪神・糸井だった。彼らに倣い、打球を遠くへ飛ばそうとするあまり、アベレージヒッタータイプだった自身のスイングに狂いが生じた。

「広い札幌ドームを本拠地としているため、自分ではスタンドに入ったと思っても、あとひと伸びが足らなかったり。昨季、本塁打王争いに敗れた中田も札幌ドームの広さ、高い外野フェンスのことをこぼしていました」(前出・スポーツ紙記者)

 今季は3年契約の最後、日本ハム入りした18-19年オフ、「成功をおさめたらメジャーリーグに挑戦」とも伝えられていた。現在も米球界志望があるのかどうかは不明だが、王柏融の移籍後、祖国・台湾での日本ハム戦の視聴者は大幅に増えており、このままでは終われないという思いもあったのだろう。

 日本ハムは故障者やPCR検査で隔離となった選手も多いだけに、王柏融の覚醒に栗山英樹監督も救われたようだ。

(スポーツライター・飯山満)

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