アカデミー賞でアジア系女性が「躍進」も中国が情報統制するワケ

 4月25日(現地時間)に行われた第93回のアメリカ・アカデミー賞授賞式は、クロエ・ジャオ監督の「ノマドランド」が作品賞、監督賞、主演女優賞の3冠に輝いてアジア人女性として初の監督賞を獲得。助演女優賞でも「ミナリ」のユン・ヨジョンが韓国人として初のオスカーを獲得するなど、アジア系の女性が大きく躍進する“異例”づくしとなった。

 だが、本来ならば中国系のジャオ監督の受賞を喜ぶべき中国はこれに対し、中国“恒例”の情報統制でスルーした。中国は彼女の言動を面白く思っていなかったからだ。

「1982年に北京で生まれたジャオ監督は西洋の大衆文化に憧れを抱いて周囲と折り合わなくなったことから、両親によってロンドンの寄宿学校に入れられた後、アメリカに渡ってニューヨーク大学で映画製作を学びました。そういった経歴について、ジャオ監督が雑誌のインタビューを受けた際、自身が反抗的な性格なのについて、『(自分が)育った頃の中国は嘘で溢れていた』と答えていたのが、彼女が有名になるにつれてネットで拡散されたからです」(週刊誌記者)

 だから彼女が口を開けばいつ何どき中国批判が口をついて出てくるか分からない。そこで中国は3月に授賞式を生中継しないことに決定していた。

「というのも、アカデミー賞の前哨戦とも言われる3月のゴールデン・グローブ賞で『ノマドランド』は映画部門のドラマ作品賞を受賞。アカデミー賞の最有力候補となっていたからです」(前出・記者)

 これを受け、4月から中国国内で行われるはずだった「ノマドランド」の上映は中止に追い込まれていた。そこに、生中継をしないという追い打ちがかけられたというわけだ。

「報道によれば、1969年から毎年、授賞式の生中継を行ってきた香港のTVBも今年は生中継を見送ったそうです。さらには、上海でジャオ監督の母校であるニューヨーク大学の卒業生が授賞式の生中継イベントを計画していたところ、2時間近くネットにつなげられない状態になったとか。ウィーチャットは検閲がかかって、ジャオ監督を讃えるアカウントが閉鎖されたようです」(中国事情に詳しい経済ジャーナリスト)

 本来、文化と政治は無縁なのだが、言論の自由のない中国にそんな常識が通じるはずもなく。

(猫間滋)

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