全国各地の駅弁を食べ歩き、「駅弁愛好家」としてテレビ番組でも引っ張りだこだった男性(47歳)が、実は横浜市の職員だったとして3月25日、兼業を禁止する地方公務員法違反で停職6カ月の懲戒処分を受けたことが明らかになった。
社会部記者が語る。
「男性は市の建設改良課に勤務する課長補佐で、聞き取り調査に対し、2015年から20年11月までに間に複数のカルチャーセンターで講師などを109回務め、その報酬として約450万円の収入を得ていた、と話しています。身元がバレたのは、昨年9月に男性がフジテレビ系の『クイズ99人の壁』に出演した際、たまたま番組を観ていた知人が『おやっ?』と思い、市役所に通報したことがきっかけ。ただ、本人としては、休暇を利用しており、『講師をするには教材費などがかかり、利益が出ていないので問題ないと思った』と解釈していたようです。しかし、公務員である以上無償が前提で、事前に申し出があれば別でしょうが、報酬を得ていたとなると、やはり地方公務員法に抵触する。停職6カ月の懲戒ということは、半年間まったく給料が出ないということですから、かなり厳しい処分だと言っていいでしょう」
著書によれば、同氏は長崎県出身で横浜国立大工学部卒。「乗り鉄」で時刻表検定試験では最高ランクの「時刻表博士」に認定された。特に駅弁には思い入れが強く、10年以上前に全国のJR、私鉄全線を制覇し、これまで7500食以上の駅弁を食べたとして、同氏が紹介する駅弁サイトは大人気。駅弁グランプリの特別審査員も務める、鉄オタの中では超がつくほどの有名人なのだという。
そんなこともあって、停職6カ月の懲戒処分が伝えられると、SNS上では《無償じゃなくても単発で数万程度なら、説教で終わってたかもだけど。さすがに109回450万の報酬となると、兼業じゃないって言い訳はきかんわなぁ》《ここまでくると公務員が副業してたんじゃなく、公務員を副業にしていたと言う方があっているのでは……ま、アウトだな!》など、処分は致し方ないという意見がある一方、《無給与6ヶ月は厳しすぎないか?被害者いる事件ではなく、業務の支障にもなってないんでしょ?》《とても優秀な人で人望もあるらしいし、仕事は真面目で楽しくやってたとか。罰を与えるだけじゃ優秀な人材はどんどん居なくなるよ》など、行き過ぎた処分ととらえる声も多く、さらには《公務員は副業禁止になってるけど実家がお寺だったりすると認められるんですよね。それって何かおかしい気がする》《これだけダブルワークが盛んな時代なのに、公務員の制度が兼業禁止のままで取り残されていることの方が問題だと思う》といった、制度そのものを問う意見がネット上に溢れた。
労働問題に詳しいジャーナリストが語る。
「今回の件は、確かに兼業を禁止する地方公務員法に違反していることは間違いありません。ただ、公務員に副業が禁止されている理由は、副業で本来の職務に支障をきたすことを問題視する側面も大きい。ですが、働き方改革が叫ばれている時代にあって、本業に支障がなければ公務員にも副業を認めてもいいのではと、地方公務員法改正の議論があるのも事実です。もちろん今回の件は、男性に問題があったことは間違いありませんが、法律にも不具合はあるということ。たとえば休日に行って仕事には影響していない、あるいは公務と利害関係のあるような職種でもないなど、様々なケースで今後、公務員の副業については議論が進んでいくことになると思いますね」
鉄オタの顔バレ停職6カ月騒動の余波が、思わぬ方向に広がっているようだ。
(灯倫太郎)