昨年から続くソーシャルディスタンスにより、男女の営みにも大きな変化が現れた。男性向けグッズとして一部マニアのものとされていた「大人用ドール」が、欧米や中国で、とんでもない勢いで爆売れしているという。業界に詳しいライターが語る。
「実は昨年、世界最大のドールストアの2月、3月の売上高が51.6%増加、うち独身女性による注文も15.8%増加した、というニュースが流れ、業界関係者の間に驚きの声が上がりました。特に中国では、最大手のEXDOLL社が中国の新興企業向け市場『新三板』で、ドール業界では世界初となる株式上場を果たしたことで、追随するメーカーも急増。1体数十万円の人形が月に数千体売れる勢いだと言われています」
大人用ドールは、当初風船のようなチープなものが多かった。だが、90年代後半に米国でシリコン製の滑らかな肌を持つリアルドールが開発され、それを引き継いだのが日本だったという。
「それまでは外国人向けに体型も大柄なものが多かったのですが、1999年にオリエント工業が発売した身長が140㎝と小柄な『アリス』が大ヒット。2000年代後半には10社近いメーカーが競合するようになり、専門誌も創刊される人気ぶりでした」(同ライター)
しかし、ここ数年は中国のメーカーが台頭。同市場で圧倒的シェアを持つようになったといわれる。
「中国のドールにはシリコン製で1体百万円近くするものから、安価なTPE(熱可塑性エラストマー)を用いた製品(市場価格が十数万円程度)まで多種多様。内部の骨格は金属を使用していますが、やはり高価な製品は重量も軽くなっています。さらに、日本と違い法的な規制がない中国では秘所付近の造形もリアルで、そのあたりも人気のようです」(同ライター)
そして、欧米や中国の富裕層の間で絶大な人気を誇っているのが、音声やアプリでの指示に応じるAI搭載のドールなのだとか。
「これは、音声を認識してネット検索などができる『iPhone』の音声アシスタント『Siri』に似た人工知能とWi-Fi機能を備えたタイプで、Wi-Fiにつながっていれば、ドールが家電を操作することもできるという優れものです。そのため、夜の相手というだけでなく、会話の相手としても十分楽しめるとして、毎月2000体以上の売り上げを誇っているのだとか。つまり、上質のシリコンによる人形とは思えない質感と、ロボットの最先端技術により、大人のドールはもはや『使い捨ての処理道具』などではなく、会話も楽しめる、かけがえのないパートナーになりつつあるということです」(同ライター)
売れ筋は、やはり少女の顔立ちをしたあどけないものや、こんがりと日焼けしたスポーティーなモデルで、なかには人工皮膚の下にヒィーティングワイヤーを埋め込み、常時体温を37度に保つ製品も登場、人気を集めているという。
2050年には、日常的にロボットとも夜の営みをすをる人の割合は、人としかそれをしない人の割合を上回るというデータもあるが……。はたして、どこまで変化するのやら?
(灯倫太郎)
*写真はイメージ