今季のプロ野球新監督は3人。中でも異彩を放っているのが、楽天の石井一久GM兼任監督だ。田中将大の獲得に成功し、チームが打倒ソフトバンクに盛り上がる中、新指揮官の拍子抜けするほどゆる〜い采配ぶりが、意外な評価を得ているのだ。
3月26日のプロ野球開幕を前に、1強5弱とも言われたパ・リーグでソフトバンクに待ったをかける球団が現れた。スポーツ紙デスクが断言する。
「今年の注目球団はズバリ、楽天ですよ。何より、ヤンキースから田中将大(32)が復帰した。開幕投手が予定される涌井秀章(34)に加え、岸孝之(36)、則本昂大(30)、これにドラ1の早川隆久(22)が即戦力ルーキーの前評判と違わぬ実力の片鱗を見せている。すでに先発5本柱は12球団随一と言っていい盤石さです。チーム内も、今年こそ13年の日本一以来となる優勝を狙える戦力だと活気づいています。その雰囲気をもり立てているのが、ほかならぬ石井一久新監督(47)です」
昨年11月、楽天は前任の三木肇監督(43)を2軍監督に降格処分、石井GMみずからが後釜に座る兼任監督という仰天人事を発表し、大きな話題となった。
「ソフトバンク・王貞治、DeNA・高田繁、古くはロッテ・広岡達朗‥‥これまで野球選手がGMに就いた例は数多いですが、GMから初めて監督になるのは、プロ野球では異例でしょう。ましてや石井監督は、コーチなど現場での指導経験がゼロ。就任当初は選手の間にも困惑が広がったほどです」(スポーツ紙デスク)
現在、西武の渡辺久信(55)やオリックスの福良淳一(60)、ヤクルトの小川淳司(63)の各GMなど、6チームがGM制を敷いている。しかし、いずれも、監督を経てからGMへ昇格するのが通例で、GMが未経験の監督を兼務することは前代未聞の人事なのだ。
しかしオープン戦のベンチ裏からは、そうした下馬評を一蹴するGM兼任監督のレポートばかりが目立つ。楽天番記者が語る。
「確かに石井新監督は指揮官としてはピリッとしない雰囲気ですが、逆に選手は怒られることもなく伸び伸びプレーしています。キャンプ初日など、石井監督が『もしベンチで居眠りしたら、起こして下さい』などと語り出し、選手は一気に和やかな雰囲気となったほど。『アピールしないと使わない!』とどなりつける某球団とは違い、チーム内の風通しはこの上なくいい状態です」
また、投手出身だけに、ブルペンとの関係も密だという。
「練習試合、オープン戦を通じて、ピッチャーが投げ終われば、話を聞いてコミュニケーションを取り、試合前のテーマと実戦感覚とのすり合わせを行っている。マー君が沖縄のオープン戦でマウンドの軟らかさに戸惑った時など、3月4日からの活動拠点となった静岡・草薙球場ですぐに硬くしたり細かい配慮をしていた。ピッチャーにとって、コーチを挟まずに直で監督に相談できるのは、ストレスが溜まらない」(スポーツ紙デスク)
問題は「専門外」となる野手部門だが、ここでも秘策らしい秘策は見て取れない。代わりに─。チーム内指揮系統に関し、球団関係者が明かす。
「攻撃は真喜志康永ヘッドコーチ(60)、守備に関しては奈良原浩コーチ(52)に一任している。中日時代の落合博満監督(67)が『ピッチャーのことはわからない』と投手の起用、采配を森繁和コーチ(66)に丸投げしていた構図とそっくりです」
このゆるゆるスタイルで、楽天は今シーズンに臨むというのだ。