賽銭を盗み続けて14年…50歳の“無職男”が明かした驚きのドロボー生活とは?

 お笑い芸人で裁判ウォッチャーの阿曽山大噴火が記憶に残る裁判を振り返る本企画。昨年から、たびたびニュースで報じられてきたのが賽銭泥棒。深夜、ひと気のない神社に忍び込み、賽銭箱を盗み出す防犯カメラの映像をご記憶の方も多いのではないだろうか。なんとも罰当たりな男が法廷で明かした驚きの“泥棒生活”とは?

 2021年は初詣に行かなかった人も多いことでしょう。人が集まると感染リスクが高まるのはわかってるわけで今年は仕方ない話ですよね。にもかかわらず、わざわざ出掛けて「コロナが終息しますように」とお願いしていた人もいたようで…。そんなリスクをおかしてまで、願掛けで投げ入れた賽銭が誰かに盗まれていたらこれほど腹立たしいことはないかもしれません。ということで、賽銭に関する裁判の話を。

 被告人は50才の無職の男性。

 起訴されたのは、2020年11月に東京都世田谷区内の神社の賽銭箱から被告人が9110円を盗んだという内容。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は高校を卒業後、会社員や新聞配達など職を転々として2007年からは無職だったという。実家で親や姉もしくは妹と同居していたとのこと。

 そして犯行当日、被告人はハリガネの先端にガムを付けて賽銭箱の中に入れ、くっついてきたお札を盗んでいたそうで…。それを目撃した通行人が交番に報告して、被告人の逮捕につながったというのが事件のあらましです。

 法廷には情状証人として、被告人の母親が出廷していました。この証人尋問で衝撃的な事実が発覚したのです。
弁護人「今回息子さんが逮捕されて、10年以上無職だと知って驚いたと?」

母親「はい」

 なんと、被告人は2007年からずーっと働いてないことを同居してる母親に言ってなかったみたいです。一緒に住んでてそんなに騙し通せるもんなんですかね。

弁護人「生活費とか入れてなかったんですか?」

母親「娘は入れてたんですけど、やっぱり払って欲しかったですね…」

弁護人「食事とかは?」

母親「一緒にはしてなくて、働いてると思ってたので自分で食べてたんだろうと」

 深夜になると被告人は仕事だと言って外出してたらしくてそれを信用したからなのか、13年間も“無職”がバレてなかったようです。

 そして被告人質問で、さらなる驚きの事実がわかったのです。

検察官「2018年10月に同じ神社で賽銭ドロボーをして執行猶予の判決を言い渡されてますね。賽銭ドロボーを再開したのはいつですか?」

被告人「判決の3日後くらいからです」

 前科がついたにもかかわらず、同じ神社で盗みをやっていたとは…。

検察官「13年間無職でどうやって暮らしてたの?」

被告人「実家なので家はありますし、食事は神社のお金で」

検察官「賽銭盗むのっていつからやってたの?」

被告人「36才の時に自転車盗んで判決受けた後からです」

検察官「じゃあ36才の時からずーっと見つからずに2018年にやっと見つかって逮捕されたってこと?」

被告人「そうです」

 なんと、賽銭ドロボー歴14年の被告人。これだけ長くやってる人は初めて傍聴しました。いろんな人がいるもんだ。

 最後は裁判官から。

裁判官「前々回の判決が2007年だから13~14年くらいやってたのかぁ…。何回くらい盗みました?」

被告人「ほとんど毎日です、雨の日以外は」

 無職じゃなくもはやプロの賽銭泥棒でしょ。雨が降れば休みだけど土日祝日も関係なしというお仕事。しかも、母親に「仕事行ってくる」と言って深夜出掛けてたのも賽銭泥棒をするためで、ある意味、ウソではなかったってことなんでしょうね。

 この神社に御賽銭を投げ入れてた人は14年間被告人にプレゼントしてたようなもんですね。願いを込めた参拝者をバカにする行為でしょう。こういう特殊な事件を聞けば初詣とか行く気なくなると思うんだけどなぁ。

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)

大川興業所属のお笑い芸人であり、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載多数。

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