お笑い芸人で裁判ウォッチャーの阿曽山大噴火が2020年の記憶に残る裁判を振り返る本企画。コロナ禍の今年はマスクの品薄が社会問題となり、「アベノマスク」が流行語にノミネートされた。“マスク”の万引きで逮捕された40代の無職男性が明かした意外な過去とは?
2020年は国民のほぼ全員がマスクをつけるようになった年。マスク元年と言っても過言じゃない年です。そんな激動の年を象徴するかのように、東京地裁で“マスク泥棒”の裁判が行われました。
起訴されたのは、今年9月、東京都内のプロレスグッズショップで被告人がプロレスマスク3枚(11万5500円相当)を盗んだという内容。
マスクはマスクでも狙われたのはプロレスマスクなのです。
被告人は母親と2人暮らしで無職。母の遺族年金で生活しているという。
被告人はプロレスグッズ集めが趣味で被害店舗は10年来の常連。犯行当日は母親とお店に入り、店員が見ていない隙にザ・コブラのマスクをズボンのゴムに挟んでTシャツで隠したという。さらに4代目タイガーマスクの覆面を同じようにしてズボンに入れ、続けて初代タイガーマスクもズボンの中へ。そのまま店の外に出たところを店長に声をかけられて犯行が発覚したという。
常連に万引きで声を掛けなきゃいけない店長の気持ちを思うとツライですね…。しかもこの店長、0円で示談に応じているという聖者のような人なんです。
被告人質問ではこんなやり取りが。
検察官「何故このマスクだったんですか?」
被告人「欲しいって気持ちと転売って気持ちです」
検察官「どれか高値がつくとかは知識があった?」
被告人「はいそれは。ただ売る店とかは決めてませんでした」
検察官「タイガーマスクってプロレス詳しくない人でも知ってるから人気あるのかなぁと思うけど。タイガーマスクですよ!」
被告人「すいません…昔タイガーマスクのマネージメントもやってたのに…」
と、そんな過去を告白する被告人。よりによってタイガーマスク盗んじゃうなんて。
検察官「しかも、そのマスクを××に入れるって!」
隠し入れた場所は責めなくてもいいでしょ。
今後はコレクションから足を洗うと約束した被告人。まさかタイガーマスクの元マネージャーがタイガーマスク盗むなんてねぇ…。
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
大川興業所属のお笑い芸人であり、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載多数。12月31日には東京・スズナリにて恒例イベント「お笑い裁判の歩き方2020」を開催予定。