指名打者制の正しい使い方は…。2020年の日本シリーズは福岡ソフトバンクの4連勝で幕を閉じた。これを原巨人の側から言い直すと、史上初となる2年連続でのストレート負け。「パ強セ弱」の要因として、指名打者制(以下=DH)の使い方が改めて調べられている。
「第2戦の両チームのDHは、まさに対照的でした。ソフトバンクのDHに入ったデスパイネは満塁アーチを放ち、巨人の闘争心を奪いました」(スポーツ紙記者)
巨人のDHを務めた亀井、ウィーラーは「言うに及ばず」だ。
また、巨人の大敗によって、「セ球団がパ・リーグ本拠地で19連敗」となった。パ・リーグ本拠地ではDH制が使われてきた。不名誉な連敗記録が更新中である以上、巨人だけではなく、セ・リーグ全体でDH制に関する戦略を立て直さなければならないだろう。
「守備に就くことで試合のリズムを掴む選手も多いようです」(ベテラン記者)
通常のペナントレースでもDH制を採用しているので、パ・リーグ有利と言わざるを得ない。しかし、セ・リーグ側は「あるデータ」に着目しているという。今年の日本シリーズ同様、全試合DH制となった35年前の対戦成績だ。1985年、阪神は西武を4勝2敗で破り、日本一に輝いている。そのとき、DHを務めたのが試合巧者のベテラン、弘田澄男だった。シリーズ成績は22打数3安打だったが、バース、掛布、岡田のクリーンアップへの繋ぎ役として、「走者を送る打撃」に徹した。強力打線をさらに引き立たせる方法としてDHを使ったわけだ。
「翌86年の日本シリーズは全試合9人制でした。勝利したのはパ・リーグの西武です」(前出・ベテラン記者)
DH制を使えなかったが、西武は3連敗の後に4連勝を飾った。当時を知る関係者の多くは「西武が勢いを掴んだ」と評するが、第3戦以外は両チームとも3点以下というロースコアとなっている。また、当時の西武は攻守に渡っての手堅い野球で勝ち上がってきた。ロースコアのゲームが多かったということは、西武が「自分たちの得意なスタイル」に相手を引きずり込んだのだろう。
85年の阪神は打って、打って、打ちまくって勝った。「バース、掛布、岡田」の繋ぎ役をDH制で得た。自分たちのスタイルで試合を進めるという点では、86年の西武と合致する。原巨人は自軍打線の長所を高めれば、DHで起用すべき選手も見えてくるのではないだろうか。
(スポーツライター・飯山満)