開いた口が塞がらないとは、まさにこのことを言うのだろう。
「女子高校生に卑猥な画像を送らせたとして、山梨県警が市立小学校教諭の男(30)を逮捕」(11月10日)
「SNSで知り合った埼玉県の中学1年の男子生徒を都内駐車場に呼び出し、性的暴行を加えたとして、警視庁が市立小学校教諭の男(29)を再逮捕(別件で逮捕・処分保留)」(11月10日)
「複数回の盗み撮りが発覚したとして、大阪市教育委員会が市立中男性教師(36)を懲戒免職」(11月11日)
「少女を誘拐したとして、香川県警が高校教諭の男(38)を逮捕」(11月12日)
これらはすべて、ここ数日の間に報道された教師による性的犯罪だ。文部科学省の調査によれば、卑猥な行為や性ハラ行為などで処分された公立学校教員は平成30年度には282人と、10年前から100人以上増え、調査を始めた昭和52年度以降で過去最多を記録しているという。
そうした犯罪教師の増加を背景に、文科省が児童生徒に対する性的行為などで懲戒免職となった教員のデータを各都道府県教育委員会の内部で検索できるツールについて、検索可能な期間を3年から40年に延長すると発表したのは9月。子を持つ親たちからは「永久追放」を望む声が聞かれるが、一方、現場では「照会期間が延長されても、現行の教職員免許法や学校教育法を改正しない限り、再採用を完全に防ぐのは不可能」との指摘もある。教育問題に詳しいジャーナリストが語る。
「通常、児童に対する性的行為でペナルティを受けた場合、原則として懲戒免職となり、3年間は教員免許が自動的に失効しますが、これまでは3年を超えると処分歴が開示されなくなっていた。そのため、今回の措置で照会できる経歴は広がったことは事実です。ただし、教育職員免許法では、懲戒免職処分や分限免職処分、禁錮以上の刑を受けた教員の免許は失効すると規定されているものの、免許が失効しても3年が経てば、再び教員免許を取得することもできるし、各教員採用試験を受験できる。なぜなら、現行法では前科、前歴を理由として採用拒否することができないからです。公務員の採用拒否のためにはなんらかの『欠格事項』に該当する必要がありますが、実は前科、前歴は採用時の欠格事項にはあたらないんです。これは、憲法第22条が保証する“職業選択の自由”に抵触してしまうからです。そのため、事件を起こした問題教師が他県でまた事件を起こして逮捕されるという再犯現象が起こっているんです」
まさか“職業選択の自由”が、問題教師の“再犯”を増やす一因と見られているとは、驚くばかりだが、さらには教師の採用試験も多くの問題をはらんでいるという。前出のジャーナリストが語る。
「たとえば、過去に事件を起こした教諭が経歴を隠し採用試験を受け、筆記や面接試験で高得点を獲得。ところが、あとで処分歴が明らかになり、それを理由に採用を拒否したとします。ただ、受験者が『試験結果開示請求』を行った場合は、原則合格、不合格の理由を開示する必要がある。受験者に『欠格事項』がないのに落とされたとなれば、“職業選択の自由”に抵触する可能性は高い。裁判を起こされることを考えれば、都道府県の一教育委員会が逃げ腰になることは当然のことかもしれません。ですから、今回の文科省の発表も、関係者の多くは『あとはそちらの判断で』と丸投げされただけだと嘆いています」
萩生田文部科学相は衆院文部科学委員会で、現在の教育職員免許法を改正する方針を示しているが、抜本的改革には、第22条が保証する“職業選択の自由”を見直すしかない。
不埒教師撲滅のため、どこまでメスが入れられるか。菅義偉政権の“本気度”が試されそうだ。
(灯倫太郎)