「2020ヤクザ流行語大賞」選定!「小林旭」がノミネートされた意外な理由とは?

 毎年恒例のユーキャン新語・流行語大賞」(現代用語の基礎知識選)のノミネート語が11月5日に発表された。「クラスター」「濃厚接触者」「アベノマスク」「3密(三つの密)」「ソーシャルディスタンス」など、新型コロナ関連の言葉が目立つが、ヤクザ業界では、異質な新語・流行語が飛び交っていたという。

「オマエら、スカウトか? ホストか?」

 今年6月に入って、新宿歌舞伎町では、コワモテの男たちがこんな質問を投げかけるシーンがよく目撃されたという。ヤクザ業界に詳しいジャーナリストが解説する。

「歌舞伎町で活動していたスカウト会社の幹部が、スカウトの引き抜きという掟破りの行動に出たのが発端と言われています。ヤクザ組織が仲裁に動いたのですが、スカウト側がヤマを返した(逆らった)ことで、一部の不良が『スカウト狩り』という行動に出ました。ネット上では100人ほどのヤクザらしき男たちが、問題を起こしたグループのスカウトを追い詰めていく動画が拡散。暴力を振るう様子もバッチリと収められていました」

 冒頭のようなセリフが飛び交った「スカウト狩り」に関連して、10月にはヤクザ組織の幹部とスカウトらが暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕された。今後、このような物騒な新語が世に出ないことを祈りたいが…。極道社会の取材を続ける作家の影野臣直氏はこう語る。

「やはりコロナ禍によってヤクザのシノギもかなり制限されたのは事実。緊急事態宣言や“夜の街”の風評もあって、お水の仕事はどこも下火になっていましたからね。そんななかで、歌舞伎町では『ホストだけが儲けている』という噂が立っていたことも、不良たちを暴力へと駆り立てた一因と見られています」

 コロナ禍はヤクザ業界にも大きな影響を及ぼした。三次団体組員が流行語に挙げるのが「義理事クラスター」だ。

「その盃を飲み干されますと、あなたは○○親分の子となられます」

 義理事や盃事ではこういった口上が聞かれるというが、皮肉なことに、そこには新型コロナの感染リスクがつきまとうこととなる。

「盃をまわす行為など、義理事にはコロナの感染の要因である“3密”がそろっているという見方もある。各種会合を開催しないよう、お触れを出した組織もあったようだけど、それは表向きの話。ムショでのお勤めをねぎらう“放免祝い”も“慰労会”とか名前を変えてやっていたようだし、ある地方都市ではそうした義理事でクラスターが発生したという話も聞いた」(前出・三次団体組員)

 コロナ禍ならではの“流行語”を前出のジャーナリストに聞くと、やや困惑しながらもこう語るのだった。

「う〜ん…。周囲ではよく『マスク美人』という言葉を聞いたかもしれない。繁華街のクラブでは、ホステスのマスク着用が当たり前になりましたが、今までブスだと思っていた子たちが、顔下半分を隠すマスクだと美女に見えるという…。あとは事務所当番でも『おい、出前』ではなく、『おい、Uber EATS』が定番になったくらいですかね…」

 最後に、歌舞伎町のクラブに勤務するママさんが今年の“流行歌”を明かす。

「みなさん、小林旭さんの『自動車ショー歌』をよく歌われていますね。はい、『あの子をペットにしたくって〜』から始まって、ニッサン、パッカード、シボレーといった自動車関連の言葉が歌詞に入っているのですが、最後の『ここらで止めても、いいコロナ〜』のコロナのフレーズで盛り上がっていますよ」

 コロナ禍でも笑いの精神を忘れないヤクザの“生態”について、前出の影野氏が言う。

「やはり組織の中で親に感染させるわけにはいきませんから、不良もコロナの感染対策はしっかりと行っていましたよ。ただ、そんな緊迫状態にあっても『コロナビールで消毒すれば大丈夫』という冗談が頻繁に飛び交っていました。不謹慎かもしれませんが、未曽有の危機を笑いに変えるようなたくましさを備えているとも言えます」

 今夜もどこかのカラオケスナックで、ヤクザが小林旭のヒット曲を熱唱しているのだろうか。

(取材協力/影野臣直)

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