巨人・戸郷翔征が痛恨の満塁弾を浴び、DeNAに大敗したのは10月27日。優勝マジックを減らせず、戸郷自身も広島・森下との新人王争いで一歩後退となってしまった。優勝を目前にしての連敗、戸郷をもってしても止められなかった敗戦は、エース・菅野智之のタイトル争いにも影響してきた。
「巨人OBの堀内恒夫氏が中日・大野を絶賛していました。自身のブログ(23日)で『すごい、の一言に尽きる』『自分の手にボールがついてるね。そしてコントロールがいい。特に変化球なんて自分の好きなところ思うところに投げられているはずだ。素晴らしい!』と伝えていました」(スポーツ紙記者)
これは、堀内氏が自身の持つ44イニング連続無失点の記録を抜き去った22日の大野ピッチングについて語ったもの。NPBの投手記録を塗り替えられた元記録保持者からのエールだが、堀内氏は「沢村賞」の選考委員長でもある。菅野も開幕13連勝でNPB記録を塗り替えたが、大野のピッチングのほうが強いインパクトを残したようだ。
「今季の沢村賞の選考は難しいとされています。試合数が減ったので、選考基準の7項目のうちの登板数(25試合以上)、イニング数(200回以上)、勝利数(15勝以上)は超えられません。インパクトの強さで決まりそうです」(球界関係者)
大野、菅野の成績を比較してみると、菅野は13勝で最多勝争いを独走。大野は10勝。しかし、完投試合は10、うち6試合は完封勝利である。菅野の完投は3試合だけ。勝率で8割6分7厘を誇るが、大野有利の見方も強まってきた。
「選考項目には『完投数・10完投』とあります。勝率、勝利数の菅野か、完投能力がケタ外れに高い大野か。沢村賞は両投手のどちらかでしょう」(前出・球界関係者)
中継ぎ、クローザーを登板させる投手の分業化が完全定着して久しい。だが、それと同時に、完投という美学の価値はさらに高まり、「大野優勢」と見る関係者も少なくない。
「巨人は菅野、戸郷が試合終盤まで投げてきました。先発投手がその役目を終えたら、リリーフ陣に託し、『全員で繋いで勝つスタイル』も定着しています。大野が投げるとき、中日のブルペンは『今日は休み』の声も聞かれるくらいです」(前出・スポーツ紙記者)
戸郷が息切れし、救援陣はさらに忙しくなりそうだ。また、「せめて菅野が投げる日だけでも」と、投手交代のタイミングも変わってくるかもしれない。菅野が余計な失点で防御率を悪くすれば、「大野優勢」の様相はますます強くなりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)