「日本で本格的なホームセンターが出来たのは1972年のこと。以来、店舗は増え続けて2019年は約4800店舗を数えます。一方で業界全体の売上高は03年ごろから4兆円弱で横ばい。今後は人口が減っていく上にネット通販との競争はし烈さを増すばかり。今年はコロナ禍の巣ごもり需要で追い風だったこともあり、まだ体力に余裕があるうちに先手を打っておこうということだと思います」
経済ジャーナリストが語るのはホームセンター業界の最新動向。もともとは両者合意の友好的TOB(株式公開買い付け)だったDCMホールディングスによる島忠の買収に、ニトリが横やりを入れるような形で始まった敵対的TOB。これを業界全体の再編劇の始まりとして捉えている。
業界トップはカインズで年間売上高約4400億円。これにDCM約4300億円、コーナン約3700億円、コメリ約3400億円と続いて団子状態だ。DCMが約1400億円の島忠を呑み込めば一気に他社に差をつけることが出来る。
一方のニトリは、家具・インテリア業界では一強。業界内で規模の拡大を目指す必要はないが、同じ理由で今後のライフスタイルの変化などを考えれば、隣接するホームセンター分野で事業を拡大、さらなる成長を目指せる。
DCMが勝てば業界内で巨人が誕生して、他社も対応を迫られる。他方、ニトリが勝っても事情は同じで、業界は黒船来襲で慌てかえらざるを得ない。他社も規模の戦いに応じざるを得ず、合従連衡の道を選ぶなど、どのみちホームセンター業界に大再編の大波が押し寄せるのは不可避と思われる。
となれば投資家が指を咥えているはずがない。
「ニトリ参戦の報道がなされるまではDCMが提示した1株4200円弱の株価で張り付いていましたが、報道後に株価が上昇。翌日は500以上も上がって、翌々日には5000円近くまで値上がりしました。となれば、両社共に5000円前後の買い取り価格を提示する必要がある。さらには旧村上ファンド系の会社が10%を超える株式を保有していることも分かり、全く先が読めない展開となるかもしれません」(アナリスト)
TOB合戦が長引いて買取価格が高騰する事例は昨年あったばかりだ。みずほ銀行系列で不動産やホテルを手掛けるユニゾホールディングスに旅行のHISがTOBを仕掛けた際、ユニゾは対抗してホワイトナイトを立てたため、TOBは長期化、ユニゾ株は高騰した。
結果、ユニゾは従業員による買取(EBO)での非公開化を選択、そのための買い取り資金捻出に複数の優良不動産物件を売却するというツケを払わされた。
さて、結果はどうなる。
(猫間滋)