全世界で感染者数が3000万人を突破。いまだ収束の気配さえ見えない新型コロナウイルス。だが、その一方で徹底した“封じ込め”によって感染拡大を抑えることに成功している地域もある。そのひとつが東南アジアだ。
例えば、タイ(人口6942万人)では5月以降、収束しつつあり、感染者数は3490人。ベトナム(9467万人)は1063人、カンボジア(1529万人)は275人など日本よりも少ない(※各国の感染者数はいずれも9月17日時点)。
だが、そんな東南アジアで今年コロナ以上に猛威を振るっている感染症がある。それがデング熱だ。
デング熱はマラリアのように蚊を媒介として人に感染。死亡率は1%以下とされているが、なかにはデング出血熱という、より重篤な症状に発展することがあり、その場合の致死率は10〜20%と一気に跳ね上がる。しかも、現時点でのコロナ同様、特効薬は存在しないので非常に厄介だ。
タイ保健省によると、今年に入ってからのデング熱の感染者は約4万8000人(※8月末時点)。コロナの10倍以上のペースで感染が拡大しており、現地在住の日本人にも感染者がいるという。
また、コロナの死亡率が世界で最も低いシンガポールでもデング熱が蔓延。同国の国家環境庁のまとめによると、感染者数は2万8942人(※9月18日時点)。過去最悪だった2013年の約2万1000人を大幅に上回るペースだ。
そもそも今年に限らず、感染者は近年増加傾向にあるのだが「地球温暖化による気温上昇が関係している可能性がある」とは医療関係者。かつてはデング熱の被害がないとされていた日本国内でも2014年に約70年ぶりに感染者が確認。昨年には沖縄県内で数例の感染者が報告された。
デング熱の北限が上がっているとすれば、今後は日本でも被害が拡大する可能性は大いにある。媒介となるのは蚊のため、虫よけなどである程度は防げても完璧に予防するのは難しい。
近い将来、コロナのようにデング熱が日本で大流行なんてことが起きなければいいのだが……。
(トシタカマサ)